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マスクの窓から野球を見ればBACK NUMBER
171cmの小兵でも、外れ外れ1位でも…阪神が近本光司を指名した決定的理由は?《2018ドラフト会議》“虎のリードオフマン”を獲得できた「納得のワケ」
text by
安倍昌彦Masahiko Abe
photograph byHideki Sugiyama
posted2023/09/25 17:02
2018年の阪神は「外れ外れ1位」で近本光司を指名。三拍子そろった外野手の獲得がマストなチーム事情もあり、外野手指名を続けた
「現場から、『今年はまず、こういう選手をどうしても獲って欲しい』ってリクエストが挙がってくる。そこで我々スカウトがそれに見合った選手を探して、評価して1位に挙げる。たとえば現場から、『今年は走攻守三拍子そろった外野手を!』って言われたら、もう、なにがなんでも、走攻守三拍子そろった外野手なんですよ」
なるほど……だから2018年の楽天は「藤原」の後も「辰己」で、阪神は「藤原」「辰己」の後、さらに「近本」だったのか。
ドラフト=実力番付ではなく、必要なのは《現場のニーズ》
「ファンの人たちから見れば、ドラフトは《実力番付》だと思っているかもしれないけど、我々プロ側から考えると、ドラフトは決してそうじゃない。貴重な補強のチャンスなんです。チームを強くしなければならない。選手の実力も大切ですけど、その前に、まず現場からの《ニーズ》ってものがある。まず、どのポジションを強化しなきゃいけないのか。どんなタイプの選手が必要なのか。それが、最優先になるんです」
そう言われてみれば思い当たるような選手も、以前いたような……。
「楽天が小深田(大翔、内野手・大阪ガス)を1位で指名した時(2019年)もずいぶんいろいろ言われたじゃないですか。近本よりも小さかった(168cm、68kg)からね。それでも、レギュラーでショート守ったりして、立派に働いている(9月23日現在、プロ4年で474試合出場、通算打率0.263)。
大山にしても、近本にしても今やプロ野球を代表する選手たちですよ。ドラフトっていうのは関わる立場、立場で、いろんな見え方がするもんです。ファンの人たちの心理もわかりますけど、我々だってプロです。この日のために何人ものスカウトが、1年間、一生懸命見て回っているわけですから、私たちを信じて、何年か先を楽しみにしてください……と、まあ、そういったとこかな」
最後のところは、軽く笑いをまぶしてオブラートをかけてみせたが、だからこそ、余計に「スカウトのプロ」としての矜持がじんわりと伝わってきた。
なんだかんだで、9月もあと数日だ。ドラフトまで、もう1カ月を切った。さて、今年はどんな球団にどんな《ニーズ》があるのだろうか?