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171cmの小兵でも、外れ外れ1位でも…阪神が近本光司を指名した決定的理由は?《2018ドラフト会議》“虎のリードオフマン”を獲得できた「納得のワケ」
posted2023/09/25 17:02
text by
安倍昌彦Masahiko Abe
photograph by
Hideki Sugiyama
「不動の4番打者」と「リードオフマン」がいるチームは強い――。
今季、18年ぶりにセ・リーグ優勝を果たした阪神タイガースの躍進には、その「絶対則」がピタリとはまった。4番・大山悠輔と、リードオフマン・近本光司。近本が死球の影響で数試合休んだとはいえ、それ以外は2人とも首位を疾走するタイガースの大看板を立派に全うしてみせた。
今でこそ打席に2人を迎える時の甲子園球場の大歓声は「チームMAX」に達するが、彼らと阪神タイガースとの初めての「接点」となったドラフト会議指名の瞬間は、必ずしも歓迎されたものではなかった。(全2回の後編/前編「2016年、大山ドラフト編」を読む)
◆◆◆
「近本が抜けるのは、もちろん野球部としても大きな痛手ですけど、会社としてはもっと痛手かもしれませんよ。社員としてもあんなに優秀なやつ、そうはいませんから。人間性、頭脳、社会性……普通に社業だけやっていたら、重役ぐらいなれるやつだと思いますよ」
2018年の夏の終わり頃だ。雑誌のドラフト特集号の取材で大阪ガスのグラウンドに行った時、野球部のある幹部の方がそんな話をしてくださった。
「社業が延びて取材に遅れるなんて、近本が初めてじゃないですか」
自慢の「社員」であることが伝わってきた。
都市対抗野球で見た近本の「瞬発力」のすごさ
その年の都市対抗野球が凄かった。
大阪ガスの中堅手として絶対的存在の近本光司は、あの小さな体で右中間フェンス直撃の弾丸ライナーを放つと、あっという間にセカンドベースを蹴って、もう三塁に滑り込んでいる。
逆に打球がセンター頭上を襲うと、前めで守っていた近本中堅手、インパクトと同時にスタートをきると、背中丸めて一目散に背走するコースが打球の軌道と1mと違っていないから、一度振り返っただけでピシャリ落下点を合わせてスーパーキャッチだ。
プレーだけ見ていると、小柄が全くハンデになっておらず、むしろ力強さすら感じる。これだけ「瞬発力」があったら、小さい分、バッテリーにとってはゾーンが狭くなってむしろ嫌な存在だ。