- #1
- #2
マスクの窓から野球を見ればBACK NUMBER
「タイガースはあいつに懸けてくれたんです」2016年《悲鳴のドラフト1位》大山悠輔“虎の主砲”の大学恩師が語った「ドラ1指名“ホントの理由”」
posted2023/09/25 17:01
text by
安倍昌彦Masahiko Abe
photograph by
Hideki Sugiyama
「不動の4番打者」と「リードオフマン」がいるチームは強い――。
今季、18年ぶりにセ・リーグ優勝を果たした阪神タイガースの躍進には、その「絶対則」がピタリとはまった。4番・大山悠輔と、リードオフマン・近本光司。近本が死球の影響で数試合休んだとはいえ、それ以外は2人とも首位を疾走するタイガースの大看板を立派に全うしてみせた。
今でこそ打席に2人を迎える時の甲子園球場の大歓声は「チームMAX」に達するが、彼らと阪神タイガースとの初めての「接点」となったドラフト会議指名の瞬間は、必ずしも歓迎されたものではなかった。(全2回の前編/後編「2018年、近本ドラフト編」を読む)
◆◆◆
大山悠輔1位指名の2016年、近本光司1位の2018年……コロナ禍勃発前のこの頃は、グランドプリンスホテル新高輪の会場に、多くの野球ファンが詰めかけてドラフト会議が行われていた。
指名された瞬間の、「ええーっ」という驚きと、「ああーっ」という狼狽が混然となったようなため息。その現場に立ち会った者として、正直「失望」に近いような感慨のにじんだどよめきが起こっていたことを覚えている。
ファンの多くは、その年、最も話題になっている選手、つまり最も評価の高い選手の1位指名を望んでいる――それが「ドラフト」の現実だ。
2016年のドラフトは投手に有力候補が多かった
大山悠輔内野手の2016年には、「投手」に優秀な人材が揃っていた。
1位指名に挙がっただけでも、千葉ロッテ、ソフトバンク、巨人、日本ハム、広島の5球団が重複した創価大・田中正義(ソフトバンク→現日本ハム)、中日、横浜DeNAが重複した明治大・柳裕也(中日)に、オリックスが東京ガス・山岡泰輔、楽天が横浜高・藤平尚真、ヤクルトが履正社高・寺島成輝、西武が作新学院高・今井達也。
繰り上げ1位でも、千葉ロッテが桜美林大・佐々木千隼、横浜DeNAが神奈川大・濵口遥大、日本ハムが広島新庄高・堀瑞樹、広島が慶應義塾大・加藤拓也(現姓・矢崎)……現在、その多くが各球団の投手陣の一角として奮投中なのを見ても、やはり「2016ドラフト」は投手に人材が豊富だったことは7年後の結果が物語っている。