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2020年「阪神“超当たり年”ドラフト」を振り返る…村上頌樹はなぜ5位? 石井大智が「育成」じゃないのは? その“納得のワケ”《18年ぶりリーグ優勝》
posted2023/09/22 11:05
text by
安倍昌彦Masahiko Abe
photograph by
JIJI PRESS
阪神タイガース、18年ぶりのセ・リーグ優勝おめでとうございます!
前回は2005年。そんなに前だったか……と思う。
60盗塁・赤星憲広が走り回り、下柳剛、井川慶、安藤優也、福原忍らの先発組が試合を作り、ジェフ・ウィリアムス、藤川球児、久保田智之の「JFK」が試合後半をピシャリと締める。隙のない試合運びで、2位を8ゲーム引き離して、ほぼ独走のリーグV。
そうやって、つらつら思い出していくと、確かにずいぶん間が空いている。今年のドラフト1位候補・前田悠伍(大阪桐蔭高)は、この年「2005年」に生まれている。
さて、今年の阪神優勝に「2020年ドラフト組」が大きく貢献していることは、すでに報道されていることだ。ならばどのようにしてこの年、このメンバーが指名されたのか。証言と推理を織り込みながら、振り返ってみたい。
<2020年ドラフト・阪神>
1位・佐藤輝明・内野手・近畿大
2位・伊藤将司・投手・JR東日本
3位・佐藤蓮・投手・上武大
4位・栄枝裕貴・捕手・立命館大
5位・村上頌樹・投手・東洋大
6位・中野拓夢・内野手・三菱自動車岡崎
7位・高寺望夢・内野手・上田西高
8位・石井大智・投手・四国IL高知
この年、ペナントレース2位で終わった阪神タイガース。2016年から3連覇を果たしていた広島がその後の2シーズンBクラスに沈み、代わりに巨人が2年連続リーグVに輝いた2020年。
2020年の阪神ドラフト…まずは「中軸打者」
首位・巨人との差は7.5ゲーム。チーム防御率としてはほぼ互角だった阪神と巨人。この大差の理由は、打線の攻撃力なのは歴然としていた。この年、大山悠輔28弾、サンズ19弾、ボーア17弾以外、10本以上の本塁打をマークした選手はいなかった。ドラフトでの選手補強は、まず「クリーンアップの一角を担える男」。焦点はそこに絞られていた。
その当時、地元の関西に「そこ」を託せそうな大型スラッガーが台頭していた。佐藤輝明内野手(近畿大)である。
4年間のリーグ戦で新記録の14本塁打をマーク。187cm、94kgの見るからに屈強そうなユニフォーム姿から、打った瞬間それとわかる大アーチをかける。阪神は仁川学院高の頃から長距離砲の素材としてマークしていたと聞くが、スリムだった当時から大学4年間で体重を20キロ近く増量して、鋼の体躯を形成させていた。