甲子園の風BACK NUMBER
悔やむのは“あの”先頭打者本塁打より「2点目」…今夏の甲子園“最も多くの試合で投げた男”仙台育英・湯田統真が振り返る2年半
text by
沢井史Fumi Sawai
photograph byNanae Suzuki
posted2023/09/19 11:06
背番号は「10」ながら、1回戦から決勝まで全試合に登板した湯田統真。マウンドでの笑顔が印象に残ったファンも多かった
初めて立った大舞台で叩き付けられた課題を、どう噛み砕き、自身の血肉にしていくのか。最上級生となった新チームの中で、まずはフィジカル面や日々の取り組みの細部から見直していく必要があると考えた。
「コントロールとストレートの速さというのはずっと課題だったんです。ただ、短期間で克服できるような課題ではないので、そこにどう向き合っていくかをずっと考えてきました。まずは力の出し方、力の操作性を上げること。冬場は体作りでも、トレーニングの中で側転や器械体操をしたりして体のバランスも意識しました」
もともと体が堅く、不器用な方でもあった。だが、体を強くすることに集中し、様々な動きを用いたトレーニングに徹した。センバツに向け実戦形式の練習が多い中でも、冬場は体作りに時間を割くことができた。
冬場の「身体づくり」でポテンシャルが開花
その成果はセンバツで如実に表れた。3試合、11イニングを投げ無失点。ストレートのスピードは昨夏に比べると抑え気味(最速144km)だったが、スライダーの切れ味は抜群で、奪った三振は13個。準々決勝でタイブレークの末、仙台育英に競り勝った報徳学園の中心打者が「湯田君のスライダーは今まで見たことのない曲がり方をしていた」と、舌を巻いていた。
「寒いと体が動かないですけれど、気温が上がるにつれて体が動くようになって、春はあそこまで投げられたと思います。センバツは次のレベルに上がるための材料や課題が見つかった大会でした。スライダーに自信はあったので、相手を大きく見過ぎず自分のボールを投げるだけでした。負けはしましたけれど、夏にベストを持っていけたらいいと思いました」
湯田と双璧でマウンドに立ったのが同じ最速150km台のストレートを誇り、背番号「1」を背負うエースの高橋煌稀だ。高橋は元々安定感に定評があり、昨夏の甲子園でも4試合12回を投げ8安打1失点、センバツでも2試合10回2/3を投げ1失点。とにかく点を取られない。コントロールの良さは下級生時から折り紙つきだった。
ゲームメイク能力から見ても高橋がエース番号を背負うのは誰もが頷くところではあったが、夏を迎える前からある変化があったという。