悔やむのは“あの”先頭打者本塁打より「2点目」…今夏の甲子園“最も多くの試合で投げた男”仙台育英・湯田統真が振り返る2年半

「すごく早かったですね」

　激動だった2年半の高校野球生活について尋ねると、湯田統真は間髪を入れずにこう返した。

「2年半、しっかり練習できたことと、大会が多かったからそう思えるのかなと。ほとんどの大会で長い日程を過ごすことができたことも大きかったです」

　今夏の甲子園では全6試合に登板した。初戦の浦和学院戦で150kmを計測し、準々決勝の花巻東戦から決勝までの3試合で151kmをマークするなど全試合で150km以上の豪球を投じ、今夏の甲子園を最もどよめかせた投手だったかもしれない。

1回戦から決勝まで全試合で登板した湯田。マウンドでの笑顔が印象に残ったファンも多かった　©Nanae Suzuki

すべての写真を見る（41枚）

「（150kmは）力の出し方がだんだん分かってきて、出そうだなという感覚はありました。ちゃんと成長できている実感もありましたし、そのための取り組みはしてきたつもりです。この夏は力の出し方を覚えたので、思うように投げられたと思います。色んな試合で投げさせてもらって、実戦経験が生きた部分もあります」

今夏の甲子園“最も多くの試合で投げた男”の原点

　そこまで胸を張って言い切れるのは“1年前の自分”があったからだという。

　昨夏の甲子園。東北勢初の全国制覇を果たし、背番号18をつけた湯田も3試合に登板した。チームとしての歴史的快挙に周囲は大いに沸いたが、個人成績に触れると湯田は目線を落とした。

「チームとして優勝できたことはすごく嬉しかったんですけれど、個人として向き合ってみたら、全く納得のいく甲子園ではなかったので……」

仙台育英「150kmトリオ」の一角として話題を集めた湯田。先発も多く、多くの視聴者の記憶に残った　©Nanae Suzuki

　初戦の鳥取商戦は5番手で1/3回のみの登板。続く明秀日立戦は先発するも、2回途中に1失点で降板している。何より心にしこりとして残っているのが準決勝の聖光学院戦だ。

　3回から2番手で登板したが、6回に3四球と4安打も絡んで3失点を喫した。結局、6回でマウンドを降りたが、この試合も含め痛感したことがあった。

「去年の夏はもう、数字に出ているのが全てでした（3試合5回2/3を投げ6安打4失点。防御率6.35）。自分は通用していなかったです。全国レベルになるとコントロールとストレートの”圧倒的な速さ”が必要だと思いました。そのために体をもっとしっかり作っていかないとと思って……。（全国制覇を果たしたとはいえ）慢心とかは本当になかったです。新チームが始まってからは、自分が引っ張っていかないといけないと思いました」

【次ページ】　冬場の「身体づくり」でポテンシャルが開花