甲子園の風BACK NUMBER
「僕が関わる高校生は“振れ幅”が大きい子たちだけど…」仙台育英・須江航監督が語る“対話の重要性”「大事なのは怒りに依存しないこと」
posted2023/09/17 11:06
text by
沢井史Fumi Sawai
photograph by
Kiichi Matsumoto
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そもそも須江が2018年1月に監督となったのは、前年にチーム内に不祥事があり、突如就任が決まってのことだった。
「当時いたのは(前任の佐々木)順一朗先生に教わりたくて入って来た子たちだから、“お前じゃねえよ”ってどこかで思われていたんじゃないかなと。だから、僕がいくら正しいと思ったことを諭しても彼らの中に入っていくのは無理だと思ったので、彼らの話を1対1で徹底的に聞きました。
この6年間で何が一番成功したかと聞かれたら、甲子園で優勝したことよりも個々の対話を重視することを気づかせてくれた、その就任1年目の雰囲気でした」
偏差値70を超える子だけではない
もともとは須江は組織の先頭に立ち、自ら言葉を発する立場に立ってきた。だが、対話を重ねて相手の思いもくみ取っていくうちに言葉にパワーが宿り、様々な音色をもたらしていったのかもしれない。
「高校生って色んな感情がありますよね。いい顔している時もあれば厳しい顔の時もあります。うるせえなって思うこともあるでしょう。高校生だからそういうこともあります。僕が関わっている高校生は偏差値70を超えるような子だけではなくて、(通知表の)5が多い子もいれば3ばかりの子もいて、振れ幅が大きい子たちが集まっている。正論や理論だけで通用しないことも多いんです。
尊敬のまなざしで見てくる子もいれば、『監督、まじだりぃよ』とか文句を言いながら成長していかないといけない層もいますから、両方に対応できる顔を持っていないといけない。うっとうしがられることもありますが、心地いいだけの組織ではうまくいかないですよ。それはどういった組織でも言えることだと思います」