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悔やむのは“あの”先頭打者本塁打より「2点目」…今夏の甲子園“最も多くの試合で投げた男”仙台育英・湯田統真が振り返る2年半 

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沢井史

沢井史Fumi Sawai

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photograph byNanae Suzuki

posted2023/09/19 11:06

悔やむのは“あの”先頭打者本塁打より「2点目」…今夏の甲子園“最も多くの試合で投げた男”仙台育英・湯田統真が振り返る2年半<Number Web> photograph by Nanae Suzuki

背番号は「10」ながら、1回戦から決勝まで全試合に登板した湯田統真。マウンドでの笑顔が印象に残ったファンも多かった

 須江航監督は言う。

「高橋の良さは140~145kmの球速帯でピシャピシャにいって、たまに148kmくらいの球がいくんですけれど、6月に平均球速が一気に上がって、たまに150kmを計測しながら145kmを下回ることはなくなったんです。でも、出力が上がったが故に体のバランスが不安定になって、コントロールがばらつくようになったんです。特に外角の球がシュートしてしまうことも多くなって。

 5月から6月は冬場のフィジカルアップに球の感覚が追いついてくる時期でもあります。高橋は5月から6月に上がりすぎたのに対して、湯田は6月に入ったくらいから徐々に良くなっていって、そこから一気に夏に上がっていったんです」

 湯田は宮城大会では5人の投手の中で最多の15イニングを投げ20奪三振1失点。甲子園でも全6試合25回1/3を投げ31奪三振で防御率は3.20。四球もわずか8個だった。

「最も神経を使った」のは話題の多かった決勝ではなく…?

 難敵続きだった今夏の甲子園で、最も神経を使った試合はどの試合だったのかを尋ねると、湯田は迷わず2回戦の聖光学院戦を挙げた。

「(初戦の)浦和学院戦ですごい試合に勝って、次の試合はどうしても油断しがちになると思うので、それだけは気を付けました。相手がしぶといチームであることは分かっていましたし、自分たちがコロッとやられそうな気がしていたので丁寧に投げました。それ以外の試合は自信を持って投げられました」

 昨夏の甲子園の聖光学院戦のピッチングが、今思うと湯田の出発点だった。その同じ相手を2番手でマウンドに立ちながら4回1/3を4安打無失点に封じたことも、自己をグングン引き上げるきっかけとなったのかもしれない。

 ただ、決勝戦の慶応戦は先発のマウンドに立つも、いきなり丸田湊斗に先頭打者本塁打を浴び、試合はスタートした。

「あれはすごかったですね。でも、ランナーが溜まってドカン、という方が嫌なので(1失点で済んだのは)想定内でした」

 先頭打者本塁打から沸いたスタンドの異様な盛り上がりもセンバツですでに経験済みだったため、気にはならなかった。

「ただ、初回に2点目が入っていなかったら(その裏の味方の攻撃で)反撃できていたかも知れないので……そこは悔しいです」

 結果は準優勝。「2度目の初優勝」を謳い臨んだ夏だったが、湯田の心の中には昨夏のような影なる部分は全くなかった。

「去年のような心残りはないです。もう少しできるところはあったかな……というのはありましたけれど、去年よりやり残したと思うことはなかったです。毎試合、試合を作れましたし、リリーフでも最低限のピッチングができたのかなと。でも、ここまで夏に良くなったのは、ほぼ奇跡みたいなものですよ(笑)」

【次ページ】 中学時代は130km台だったストレート

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