Jをめぐる冒険BACK NUMBER
「25~26歳にはプレミアで」藤田譲瑠チマが語る“バランス型MFの理想”と10代で築いたベース「嘉人さんにはたくさん怒られましたけど…」
text by
飯尾篤史Atsushi Iio
photograph byAtsushi Iio
posted2023/09/18 11:03
9月、U23アジア杯予選での藤田譲瑠チマ。パリ五輪切符獲得のために、さらなる成長を期待したい
「自分はこれと言って突出したものがないので、バランスタイプというか。ボランチを組む選手が上がりたい選手だったら、自分はバランスを取る役割をこなせるし、逆に、そんなに動きたくない選手だったら、自分がどんどん動いて前に顔を出したりできる。どんなタイプとも組めるし、どんなチームにもハマる選手――そう見られたらいいなって思います」
お手本とする選手のひとりは、元フランス代表のボランチ、エンゴロ・カンテである。
身長169cmとヨーロッパのサッカーシーンでは小柄の部類だが、類まれなるボール奪取力とボックス・トゥ・ボックスを体現する無尽蔵のスタミナで、無名の存在からチェルシーの主力へと上り詰めた。
譲瑠のストロングポイントのひとつも、カンテと同様のボール奪取力だ。
「STVVのスタッフ陣から『誰を目指しているんだ?』って聞かれたとき、『カンテだ』って答えたんです。それ以降、フィジカルコーチがずっと『カンテ』って呼んできます(苦笑)」
ボール奪取とともに、縦パスでスイッチを
デビュー戦となった8月20日のゲント戦直前のアライバルインタビューで、トルステン・フィンク監督もスタメンに抜擢した日本人ボランチのことを、「カンテ」だと紹介している。
「こっちの選手はシンプルで、プレーが読みやすいから、ボールを奪える回数が日本にいるときよりも増えていて。そういったところが自分の強みになってくると思います」
とはいえ、守備専任というタイプでもない。
例えば、連続スタメンとなった8月27日のセルクル・ブリュッヘ戦では、味方からの横パスをワンタッチで縦に入れるシーンが何度かあった。決して回数が多かったわけではないが、その縦パスがスイッチとなり、シント・トロイデンの攻撃が加速した。
「あれは監督から試合前に求められていた形でした。常に狙っておくことは、体に染み付いている部分でもあります。自分としてはもう少しゲームコントロールしながらズバッと入れたいんですけど、(内田)篤人さんがDAZNの番組で『ヨーロッパでは落ち着かせる選手は必要ない』というようなことを言っていて。チームの前線の選手を見ていても、攻められるときは攻め続けようっていう感じなんで、そういうテンポの中でも自分の良さを出していけるようにしたいですね」
「怒られたけど」可愛がってくれた“嘉人さん”
日本代表OBが指摘した欧州のスタンダードには徐々に慣れるとして、縦パスを常に狙っておくことを譲瑠の体に染み込ませてくれたのは、内田とは別の日本代表OBだった。