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「焦りしか感じてなかった」藤田譲瑠チマ21歳が語る海外移籍の舞台裏…目に留まったベルギー戦、4年ぶりのオランダ戦〈パリ世代インタビュー〉
posted2023/09/18 11:02
text by
飯尾篤史Atsushi Iio
photograph by
Atsushi Iio
ベルギーのシント・トロイデンに合流して3日後のアンデルレヒト戦には選手登録が間に合わなかったが、その1週間後、8月20日のゲント戦で藤田譲瑠チマはさっそくスタメンに抜擢された。
1カ月前にチームに合流した盟友の山本理仁にはまだ先発の機会が訪れていないことを考えると、順調なスタートだと言っていい。
それまでボランチとして起用されていた伊藤涼太郎が筋肉系のトラブルに見舞われたために巡ってきたチャンスではあった。
だが、それにしてもなぜ、加入間もない譲瑠に白羽の矢が立ったのか――。
ボールを奪おうという意識を評価してくれた
「合流したときから自分の動きが良いことは感じていたんです。監督の戦術をまとめたビデオをまだ見てないんで細かいことはわからないんですけど、守備でどんどんボールを奪おうという意識でやっていたら、監督が評価してくれて。涼太郎くんが外れて、誰が入るんだろうと思っていたら、自分がスタメン組に呼ばれたんです」
対戦相手のゲントは昨季5位の強豪だから、譲瑠の守備力が買われたのは確かだろう。
一方で、シント・トロイデンの練習を見学していて、トルステン・フィンク監督(元ヴィッセル神戸監督)が譲瑠を起用してみたくなった理由がわかった気もした。
甲高い声で絶えず味方に指示を出し、ボールを常に要求する姿は、横浜F・マリノスの久里浜の練習場にいたときと変わらない。ハーフコートゲームでも、最も声を出し、最もボールに絡むのが譲瑠だった。金髪のカーリーヘアと相まって、ついつい目を奪われるのだ。
“冨安・遠藤・鎌田は先発だけで満足してなかった”と
シント・トロイデンから獲得オファーが届いたのは、今年7月のことだったという。かねてから海外でのプレーを熱望していた譲瑠にとって、それは待ちに待った知らせだった。
とはいえ、諸手を挙げて喜べたわけでもない。
「正直なところ、STVVかっていう思いはあって。海外に行くなら、日本人が誰もいないチームにポツンと入って、どれだけやれるか確かめたかったし、行けるんだったら5大リーグに行きたかった。代表の試合でヨーロッパのチームとやって、手応えも掴んでいたんで。もちろん、オファーをくれたSTVVには感謝しています。とにかく自分にとってはまずヨーロッパの舞台に立つことが大事。だから、STVVの理念はすごくありがたいというか。プラスに捉えて、自分にできることをやっていこうと思っています」
元FC東京GMの立石敬之氏がCEOを務めるシント・トロイデンは、日本企業のDMM.comグループが経営権を持つクラブである。2017年11月の買収以降、日本人選手がヨーロッパで飛躍するための足がかりの場となるべく、日本人選手を積極的に獲得してきた。