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「僕が関わる高校生は“振れ幅”が大きい子たちだけど…」仙台育英・須江航監督が語る“対話の重要性”「大事なのは怒りに依存しないこと」 

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沢井史

沢井史Fumi Sawai

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photograph byKiichi Matsumoto

posted2023/09/17 11:06

「僕が関わる高校生は“振れ幅”が大きい子たちだけど…」仙台育英・須江航監督が語る“対話の重要性”「大事なのは怒りに依存しないこと」<Number Web> photograph by Kiichi Matsumoto

須江航監督の指導は何より「対話」を重要視するのだという。それに気づくきっかけとなった就任1年目の出来事とは…?

「一番は説明するしかないんです。何がダメなのか、じゃあどうすればいいのか。その後どんな風に歩んでいくのかはその子の思考力によります。1アドバイスをして10にできる子もいれば、7くらい言わないと行動に移せない子もいます。それは本人との対話の中で与える部分の微調整が必要です。極力与えない方がいいんですけれどね」

 須江は、かつて仙台育英の系列校である秀光中学校でチームを率い、創部間もない野球部を全国レベルにまで引き上げた実績がある。中学野球と高校野球。畑は違うが、中学生を指導してきた経験も高校生の指導にプラスに働いているという。

「ひとつ下のカテゴリーを経験していることは、優位な部分が大きいと思います。何なら小学生も指導していたら良かったなって思うくらいです。思春期、多感期の中で色んな悩みが凝縮されている中学生を見てきたので、高校生はかわいいものです。でも『絶対にこれをしないとうまくいかない』と思ったことは、やっぱり話を聞くことですね。

 中学生は良い意味で自分が何者かを分かっていなくて、従順なんですよ。でも高校生は、県選抜に選ばれたとか、基本的に成功体験を積んじゃっているので、自分の型取りができていて中学時代の恩師の影響もある。なので、僕から何かを伝えても心の底では否定している子もいるんですよね」

人生は敗者復活戦

 そんな風に、様々な目つきをした選手を預かってきてもう6年目。それでも須江のチーム作りは結果にしっかりリンクし、昨夏の全国制覇から一気に注目を集めている。

 かつては大所帯だった仙台育英は、現在は1学年の部員数が25人前後だ。寮のキャパシティーの問題、目の行き届く人数がそれくらいであること、当初は20人弱でもと考えたが、競争させるのに最も適しているのが25人前後だと考えた結果だった。その人数にすることは、須江が母校の監督の就任の打診を受けた際に、最初に出した“お願い”でもあった。

「人生は敗者復活戦」

 須江が発した、今夏新たにピックアップされた言葉だ。

 失敗しても這い上がる。肝に銘じる。

 学生コーチ時代の苦い経験が、長年の時を経て須江の体の一部となり、昨夏、大輪の花を咲かせた。来年はどんな色のどんな形の花が咲くのか。東北の雄、いや、今や全国指折りの常勝校となったライオン軍団への期待は尽きない。

「甲子園決勝戦」編につづく)

#3に続く
「応援のせいなんて1%も思っていないですよ」仙台育英・須江航監督が振り返る“あの”甲子園決勝戦「慶応さんが普通に強かった。完敗です」

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