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岡田彰布、原辰徳、立浪和義…“名選手、名監督にあらず”は本当か? 名将・野村克也が語る「上手に戦う指揮官がやっていること。それは…」 

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野村克也

野村克也Katsuya Nomura

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photograph byTamon Matsuzono

posted2023/09/23 11:03

岡田彰布、原辰徳、立浪和義…“名選手、名監督にあらず”は本当か? 名将・野村克也が語る「上手に戦う指揮官がやっていること。それは…」<Number Web> photograph by Tamon Matsuzono

「名選手」にして「名監督」だった野村克也氏

 吉村への物足りなさとともに、V9の川上哲治、ライバルでもあった長嶋茂雄、実績を残しながら自分に監督の座を譲った藤田元司、歴代監督の顔も、脳裏にちらついていたのだろう。 

「善く戦う者は、これを勢いに求めて人に責めず。故に能く人を択て勢いに任ず」

 古代中国の兵法家、孫子の言葉である。上手に戦う指揮官は、勢いを求めて采配をする。個人頼みではなく、人材をうまく当てはめて勢いを作る。 

選手は、常に監督を見ている。

 戦いの基本は「戦力」「士気」「心理」「変化」の4つである。士気を高め、自軍と相手との間で心理を読みあい、変化するかしないかを決断する。これが「戦術」である。

「ウチの監督は、選手としては素晴らしかったけれど、監督としてはどうだろう」

「何をすれば喜んでもらえるのか。何をすれば嫌われるのか」 

 選手は、常に監督を見ている。新人監督であればなおさらだ。世代交代や若手の育成という中長期的な「戦略」を確かに持ち、戦力を選び、自分はこうやって勝っていくんだという「戦術」を見せなければ 
ならない。 

「長嶋巨人を挑発します」

 私がヤクルト監督時代の1993年。長嶋茂雄が巨人の監督に復帰し たとき、球団上層部に、こう申し入れた。 

「長嶋巨人を意図的に挑発します。よろしいですね」

 巨大戦力を誇るチームに、「ミスタープロ野球」が指揮官として加わる。その前年にリーグ優勝したヤクルトにとっては、いうまでもなく連覇への最大のライバルになる。

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