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選手から不満噴出、金メダルコーチが突如不参加…競泳ニッポンに何が起きているのか? 平井伯昌コーチが指摘する“強化体制の遅れ”問題
text by
雨宮圭吾Keigo Amemiya
photograph byKYODO
posted2023/08/23 06:04
7月の世界水泳の会場となった福岡マリンメッセ。“地元開催”となった日本代表だが、銅メダル2個とメダルなしの1994年ローマ大会以来最低の成績となった
「不十分と思われる強化計画になってしまったことは我々パリプロジェクトチームの対応が遅かった責任も否めない。しかも、これまでも(現体制下では)計画変更が多かったから、水連側にも提出された事業計画への疑問があったんだと思います。国際大会の日程変更が多かったこともあるが、今までにないほど変更の多い強化計画だったから修正案すら通してもらえなかった。
予算折衝後の修正は現実的にはとても難しいでしょう。それでも、常務理事会で大幅な修正が認められるように動く必要があったと反省はしています」
平井氏としては、そうやって現体制をサポートし、必要と思われるものについては提言し、折衝にも汗をかいてきたという自負があった。だからこそ、またしても自分の言葉を聞き入れてもらえなかった世界水泳最終日の出来事がぐさりと突き刺さった。
「できるだけ補佐しなければと思ってやってきたけど、メドレーリレーの声かけの件でなんだか心が折れちゃったんです」
メダルのために必要な組織力
競泳は本来、個人競技。東京五輪が終わって補助金なども縮小し、どのスポーツ団体も予算の減少に頭を悩ませている。競泳も代表チームとしての強化にこだわらず、個々に委ねていけばいいのかもしれない。
ただ、平井氏は真のトップを目指すためにはチームとしての一体感と求心力が必要不可欠と考えている。
「コーチであれば自分の選手を強くする方法は知っています。日本人はすごく勤勉なので、それがわからないはずはありません。ただ、オリンピックでメダルや金メダルを獲るとか世界記録を出すとなると、極端な言い方をすると人智を超えたような戦いになるわけですよ。それって一人一人が勉強すればできることなのか? 僕は自分の経験上できないと思った。だから、いろいろな人を集めてチームを、組織を作った。そうしないとずっと勝ち続ける国にはなれないんじゃないかと考えています」
<続く>