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「選手もこれじゃダメだって気づきます」前日本代表HC・平井伯昌が語る“競泳ニッポンの窮状”「世界のトップを目指す“方法論”がない」
posted2023/08/23 06:05
text by
雨宮圭吾Keigo Amemiya
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来年にパリ五輪を控え、自国開催の世界選手権に臨んだ競泳日本代表。結果は銅メダル2個の惨敗で、メダルなしだった1994年ローマ大会以来最低の成績となった。
大会後、一部の代表選手はSNSで日本水泳連盟(水連)や強化体制を公然と批判。8月15日には水連とコーチ陣、選手による緊急ミーティングが開催されたが、内紛ともいえる競泳ニッポンの異常事態はいまだ収束したようには見えない。
今回の当事者のひとりが、北島康介や大橋悠依といった金メダリストを育ててきた平井伯昌氏だ。騒動の発端となった7月の世界水泳にコーチとして参加し、日本選手団入りが決まっていた9月のアジア大会への参加を辞退した平井氏に話を聞いた。(全3回の第3回/初回「辞退の理由」編は#1へ)
方法論がない…選手も「これじゃダメだ」って
選手の指導力に秀でたコーチであってもチームや組織のマネジメント能力も長けているとは限らない。今回の問題も強化委員長やコーチ陣の責任だけではなく、水連側の姿勢にも責任があると平井氏は主張した。
「目標を掲げられて頑張れと言うわりには方法論がないんです。選手だってこれじゃダメだって気づきますよ。それは競泳委員会だけに限らず水泳連盟全体に『こうしていこうよ』というメッセージ性が足りないからだと思う。東京オリンピックが終わって色々な組織が予算的にきつくなっている。その中でも水連が『センターポールに日の丸を』と目標を下げずに頑張ろうと言うなら、水泳連盟として何かしなきゃいけない。でも何もしていないような気がします。例えばナショナルコーチ制を取り入れたり、旧態依然としたやり方に頼らないで変えていくことも必要なんじゃないかと思うんです」
なければ「それまで」という姿勢
平井氏が水連の姿勢を問うのには、こんな出来事も影響している。
昨年、先発隊としてスペインで合宿をしていた際、後発隊の選手とともに来るはずだった追加のトレーナーが新型コロナの事情で来られなくなってしまった。十分なケアがなければ、せっかくの遠征も十分な実りを得られない。ところが、日本にいる責任者は「行けなくなったのだから仕方がないでしょ」という態度だったという。結局、現地で日本人関係者の伝手を得てスペイン人トレーナーを3人調達することができたものの、それは現場のスタッフが機転を利かせたその場しのぎの対応でしかなかった。
「なくなったら、『ハイそれまでよ』というのが東京オリンピック後の現状だった。AがダメだったらB、BがダメだったらCで現場に必要なものは揃えておくのが、組織運営でも会社経営でも必要じゃないかと思うんだけど……」
不可解なリオ五輪直前の人事
水連はどこまで強化を本気で考えているのか。平井氏が最初に組織の体質に疑問を抱いたのは8年前にさかのぼる。