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競泳ニッポン“内紛”騒動、発端は「選手への高圧的な声かけ」だった…代表コーチを電撃辞退、平井伯昌が明かす真相
posted2023/08/23 06:03
text by
雨宮圭吾Keigo Amemiya
photograph by
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大会後、一部の代表選手はSNSで日本水泳連盟(水連)や強化体制を公然と批判し、五輪4大会連続出場の大ベテラン、入江陵介もイベントで「体制を変えるなど何かをガラッと変えないといけない時期。顔を合わせて話し合う機会が必要だと思う」と語った。8月15日には水連とコーチ陣、選手による緊急ミーティングが開催されたが、内紛ともいえる競泳ニッポンの異常事態はいまだ収束したようには見えない。《全3回の第1回/#2につづく》
金メダルコーチが国際大会の代表選手団入りを辞退
今回の当事者のひとりが、北島康介や大橋悠衣といった金メダリストを育ててきた平井伯昌氏だ。平井氏は代表コーチとして参加していた世界選手権翌日のミーティングを欠席し、水連はその行動を「職務放棄であり、問題視している」と主張。すでに選手団入りが決まっていた杭州アジア大会について平井氏から辞退届を受け取ったと明らかにした。
代表においてこの20年間強化の中核を担ってきた平井氏が、なぜそのような行動に出たのか。職務放棄、そしてアジア大会辞退の理由について尋ねると、平井氏はその経緯をこのように語った。
「ミーティングを欠席したのは自分なりにやむにやまれぬ理由があったからです。統括の常務理事にはミーティングには出ないという意志と理由を事前にしっかり伝えました。確かにその時にアジア大会も辞退させて欲しいと言いました。ですが、後日、(競泳委員会の)梅原孝之委員長とお会いした時に『自分から言い出したことだが、選手が混乱するので、申し訳ないが、アジア大会には行くことはできないか』とお話ししました。すると委員長は『それは無理でしょう、水連から処罰をするよりは自分から辞退届を出した方が良いと言われてきた』という話をされ、処罰を受けようかどうか少し悩みましたが、結局用意された書面にサインをしたのです。アジア大会辞退という決断は考えてのことでしたが、その後に『行動規範違反』ではなく職務放棄と言われたことには釈然としないものが残りました」
大会最終日にあった、ある事件
やむにやまれぬ理由――。今回の事態に繋がる直接的な要因は、大会最終日の女子4×100mメドレーリレーの予選後の出来事だった。関係者に取材を進め、話を総合するとその内容は以下の通りだ。