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“打”の松山、“走”の羽月、“守”の曽根…じわり浮上で首位を窺うカープの、終盤を勝ち切るための3人の切り札 

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前原淳

前原淳Jun Maehara

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photograph byJIJI PRESS

posted2023/07/03 11:02

“打”の松山、“走”の羽月、“守”の曽根…じわり浮上で首位を窺うカープの、終盤を勝ち切るための3人の切り札<Number Web> photograph by JIJI PRESS

今シーズンは主に代打として活躍する松山。リーグ3連覇に貢献した37歳のベテランは今年が16年目のシーズンとなる

 松山と羽月を矛とすれば、盾となるのは整備された中継ぎ陣。セーブシチュエーションでの失敗がなく、負け知らずの矢崎拓也を筆頭に、ニック・ターリー、島内颯太郎、そして復調した栗林良吏のカルテットが「要塞」となっている。

ユーティリティプレイヤーの新境地

 守りを固める切り札に、新たに曽根海成という盾も加わった。昨季までは代走と三塁を主とした守備固めの役割を担ったが、今季はそれらに加え、外野の守備固めという新境地を切り開いた。

 5月26日ヤクルト戦(マツダスタジアム)で今季初めて右翼手の守備固めで起用され、6月15日楽天戦(マツダスタジアム)では6回に代走で出場し、右翼に就いた7回は無死一、三塁から鈴木大地のほぼ定位置への飛球を捕球すると、本塁へワンバウンドのストライク送球。同点の走者の生還を防いだ。

 だが、直後の8回に右翼線の当たりを後逸するミスもあり、翌日はうなだれる姿があった。

「プラマイゼロ? あんなミスしたらマイナスでしかない。やってはいけないミス」

 曽根にとっては喜びから悔しさに上塗りされた試合は、他球団に強烈な印象を与えたに違いない。あのレーザービームの残像はきっと、三塁コーチの腕を重くする。

 曽根は広島に移籍した2018年から途中出場が続くキャリアの中で、生き残るために安定性と確実性を求めてきた。春季キャンプのキャッチボールからリリース後に右手をしっかりと返す意識付けが細部の精度向上につながっている。広島の終盤の守りを固めるひとつの武器が、新たに加わった。

 選手にとって、レギュラーでない役割は本意ではないかもしれない。だが、誰かの代わりに出るスタメンではなく、替えが利かない切り札となることで、チーム力は上積みされる。とっておきの切り札があるからこそ、接戦に持ち込めば何かが起こる——。そんな期待を抱かせてくれる。

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