炎の一筆入魂BACK NUMBER
“打”の松山、“走”の羽月、“守”の曽根…じわり浮上で首位を窺うカープの、終盤を勝ち切るための3人の切り札
posted2023/07/03 11:02
text by
前原淳Jun Maehara
photograph by
JIJI PRESS
じわりじわり、広島が来た。首位阪神の独走状態から、セ・リーグのペナントレースは混戦模様となっている。その中で急浮上してきたのが、新井貴浩監督率いる広島だ。
戦前の評論家予想は最下位が並んだように、豊富な戦力を擁すわけではない。昨季まで4年連続Bクラス。全国区の選手も少ない。3月のWBC日本代表に選出されたのは、大会途中で登録を外れることとなった栗林良吏1人のみ。ここまで2桁本塁打を記録する選手はいない。それでもベンチ入りする26人の戦力を最大限に生かして、上位争いに加わってきた。
チームの成長は借金と貯金の推移からも読み取れる。4月は‐4から+3、5月は+3から-1で推移。6月に入ると±0を底に貯金を5まで伸ばし、6月4日まで9ゲーム差あった首位との差を3.5差まで縮めた。
安定した戦いを示す数字がある。3点差以内の試合数、54試合だ。3点差以内の勝率ではDeNAに次ぐ.556も、最も多く僅差の展開に持ち込めていることが分かる。
接戦になれば、終盤の選手起用が重要となる。次の1点を取るための選手、1点を守るための選手がいることは首脳陣にとっては戦略を立てやすくなる。
チーム最年長の代打の切り札
終盤の大きな攻めの一手となっているのが、代打の切り札の松山竜平だ。チーム最年長の職人は今季、代打成功率が.375、12打点。勝利打点4は、西川龍馬、野間峻祥、ライアン・マクブルームら主力と同じ数字となっている。
チーム内でトップクラスの打力を誇る。代打だけでなく、今季のスタメンは交流戦の7試合を含め10試合を数える。当然本人もレギュラーとして試合に出ることへの選手としての渇望を失ったわけではない。
だが、守備力に不安がある一方で、たとえば2021年の代打成功率が.326と代打に適性があり、終盤に出てくる投手に多いフォークなどの縦の変化球への対応に長けている。そんな選手をとっておきのカードとして残しておくことで、チームは局面を変えられる。