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公立進学校が“仙台育英と互角”の衝撃…「なぜ平日の練習2時間で強いのか?」就任3カ月で東北大会ベスト4の盛岡三監督が明かす“合言葉”
text by
田口元義Genki Taguchi
photograph byGenki Taguchi
posted2023/06/13 11:02
春の東北で私学が上位を独占して8年。この構図に風穴を開けたのが、2014年以来の出場となった盛岡三である
監督は「就任3カ月」…進学校の強み
「緻密な野球もいいですけど、一気に行く姿勢も大事にしたいですから」
監督が不敵に笑う。
実は伊藤が盛岡三の監督に就任してから、まだ3カ月足らず。にもかかわらず、短期間で強豪私学と互角以上に渡り合えるチームに仕上げられている背景に、彼の経歴がある。
今年の3月まで9年間、指揮していた一関一も盛岡三と並ぶ進学校であり、ここでの指導経験が生かされているのだという。
「進学校の強みというものがありまして。賢い子が多いということは、それだけ集中力が高く、粘り強いんです」
平日は平均2時間しか全体練習ができないなかでも、ケースバッティングなどその日にテーマとした内容を突き詰めていく。試合では攻撃や守備の目的を全員で共有し、相手や展開に惑わされずに遂行する。
この芯の強さ。それは、進学校らしいとされる「データ野球」にも反映されている。
盛岡三は、試合で記録員としてベンチに入る古舘翼を中心に、控え選手たちがテータ班として相手チームの分析を担う。そこには、監督の伊藤が「集中力と粘り強さ」と評する性質が表れているのだと、主将でキャッチャーの田村悠人が頭を下げる。
「試合当日の朝の3時くらいにデータが送られてきたりするんで。バッターの打球の傾向であったり、細かいところまで分析してくれているんで、本当に助けられています」
仙台育英ともがっぷり四つ…
優勝候補の仙台育英との準決勝は、攻守ともに盛岡三の思惑が多く一致していた。
先発の高橋煌稀、2番手の湯田統真と、150キロのストレートを持つ相手ピッチャーからは5安打、無得点に封じ込められたとはいえ、4イニングで先頭バッターが出塁するなど少なからずプレッシャーを与えられた。
伊藤が攻撃の意図を明かす。
「150キロのボールなんて、生で見たことがありませんから。『高めに手を出すと厳しいから、ローボールに食らいついていこう』と話しました。かといってストレートだけに絞らせるんではなく、選手個人が打席で判断しながら打つボールを選択させました」