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公立進学校が“仙台育英と互角”の衝撃…「なぜ平日の練習2時間で強いのか?」就任3カ月で東北大会ベスト4の盛岡三監督が明かす“合言葉”
posted2023/06/13 11:02
text by
田口元義Genki Taguchi
photograph by
Genki Taguchi
今年の東北大会。4強には八戸学院光星、仙台育英、ノースアジア大明桜と大会の常連たちが顔を揃えた。
春の東北で私学が上位を独占して8年(2020年と21年は新型コロナウイルス感染拡大防止により中止)。この構図に風穴を開けたのが、準優勝した2014年以来の出場となった盛岡三である。
岩手屈指の進学校…なぜ躍進?
岩手県有数の進学校であり、東京大をはじめとする有名国公立大への進学実績も安定しているチームは、初戦で青森第1代表の八戸工大一を8-1の7回コールドで撃破。そして、この勝利がフロックでないと証明したのが準々決勝の日大山形戦だった。
八戸工大一戦で見せたような得点力の源は、積極性にあった。得点の動きが少ない序盤こそ、ノーアウト一塁から送りバントとセオリーを駆使していたが、3-1と2点リードした4回、ノーアウト一、二塁で2番バッターに強攻させ、同じスコアの5回1アウト一、三塁でもピッチャーで8番を打つ藤枝歳三にスクイズをさせなかった。
本来ならばバントが多い役割の打順であっても打たせる。結果はともに凡退し、追加点を奪えなかったが、監督の伊藤崇は悔しがるそぶりを見せずに作戦の正当性を訴えた。
「ノーアウト一塁でバントをしてワンアウト二塁にするより、打って一、二塁、あるいは二、三塁にできたほうが多く得点が入りますから。もちろん、状況に応じて手堅く送ることもありますけど、そういう攻撃ばかりしていては私学には勝てませんので」
今年のチームに関して、伊藤にはそう言えるだけの根拠がある。
全体的に選手のフィジカルが強く、パワフルなバッティングができる選手も多い。だから、試合では「強く、低い打球を打とう」と徹底させ、「長打を狙え!」と大胆な指示を大声で伝えることもあった。6回にツーベースと単打で1点、8回には3本の短長打で2点を挙げたのは、いずれも2アウト、ランナーなしからだ。試合を通じフライアウトが12個と少なかったわけではないが、初志貫徹のベンチワークと実践力が山形の強豪を6-2で退ける大きな要因となったのである。