野球クロスロードBACK NUMBER
公立進学校が“仙台育英と互角”の衝撃…「なぜ平日の練習2時間で強いのか?」就任3カ月で東北大会ベスト4の盛岡三監督が明かす“合言葉”
text by
田口元義Genki Taguchi
photograph byGenki Taguchi
posted2023/06/13 11:02
春の東北で私学が上位を独占して8年。この構図に風穴を開けたのが、2014年以来の出場となった盛岡三である
ディフェンス面はより顕著だった。
27アウト中ゴロが14個。そのうちショートが処理した打球は半分以上の9個だった。これこそ、盛岡三が仙台育英打線を術中にハメことを示している。
制球力が高く、変化球を外角と内角に低く、丁寧に投げ分けられるエースの藤枝のピッチングが奏功したわけだが、これには伊藤も手応えをにじませていた。
「相手のバッターは、変化球に対しておっつけているようなバッティングをしているように見えたので、1球、1球、配球に注意しながら攻めていこうと考えていました」
結果として3点を奪われチームは敗れたものの、盛岡三は優勝候補相手に土俵の中心でがっぷり四つの戦いを演じたことは確かだ。
仙台育英・須江監督も絶賛
昨夏の甲子園を制した仙台育英の監督、須江航のこの称賛が何よりの証左である。
「大阪桐蔭さん、智辯和歌山さんのような全国に名だたる強豪であっても、今日の盛岡三高さんのような攻められ方をされたら簡単には打ち崩せないでしょう。それくらい素晴らしかった。バッティングにしても、うちのピッチャー陣に対して無駄なボールには手を出さずに狙い球を絞っていましたし、よく研究されているなと感じました」
私学優勢と呼ばれるなか一石を投じ、自己証明を果たした盛岡三の春。
「公立でもやれるんだぞ」
進学校の特性を熟知する伊藤が、盛岡三の新監督に就任してからチームに訴え続けている、合言葉である。
春の王者である花巻東を筆頭に一関学院、盛岡大附、盛岡中央など、強豪私学がひしめく激戦区において、盛岡三は脅威を与えた。
だからといって、チームを率いる伊藤の気持ちが弛緩することはない。
「岩手県内には素晴らしい私学がたくさんあります。並大抵の戦いでは勝ち上がっていけませんから、どんな相手にも臆することなく地に足を付けて、ここから一瞬、一瞬を大事にしながら夏を迎えたいなと思います」
進学校が目指す、34年ぶりの夏の甲子園。
盛岡三はやるぞ。
ライバルたちも警戒するであろうその実力。真価は、間もなく試される。
記事内で紹介できなかった写真が多数ございます。こちらよりぜひご覧ください。