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藤井聡太七冠・新名人「羽生先生の七冠は全冠制覇で特別」に元A級・田丸昇73歳「さらなる金字塔を」、加藤一二三83歳の言葉は… 

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田丸昇

田丸昇Noboru Tamaru

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photograph byKeiji Ishikawa

posted2023/06/03 11:04

藤井聡太七冠・新名人「羽生先生の七冠は全冠制覇で特別」に元A級・田丸昇73歳「さらなる金字塔を」、加藤一二三83歳の言葉は…<Number Web> photograph by Keiji Ishikawa

名人戦第5局を制した藤井聡太・新名人

 渡辺は中盤で▲4五歩と突いて先制し、角を切って攻め込んだ。さらに飛車を活用した。第3局と第4局で見せた「不退転の決意」で、手応えを感じたという。

 苦戦を意識した藤井は、△4六角と飛車取りに打って受け、次に△6六角と進めて反撃した。渡辺はこの手順を予想していなかったという。86分の長考で▲2三桂の王手を打ち、相手玉に迫っていった。しかし、何か誤算があったようで、有力な寄せが続かなかった。終局後の検討では、▲2三桂では▲6六同金と角を取るべきだったが、勢い込んだ流れに水を差すようで実際には指しにくい。

藤井の将棋は美しくて無駄がない

 その後、藤井が反撃に転じて△5九飛の王手を打つと、渡辺の菊水矢倉の弱点が露呈した。第2図はその部分局面。中盤で指した4筋と6筋の角が攻防によく利いている。いつものことだが、藤井の将棋は美しくて無駄がない。

 実戦はまもなく藤井が94手で勝った。終局時間は18時53分。

 藤井竜王は20歳10カ月で名人を獲得し、谷川十七世名人が1983年に打ち立てた21歳2カ月の最年少記録を更新した。また「七冠」の取得は、1996年の羽生善治九段に次いで2人目で、羽生の25歳4カ月の最年少記録を更新した。

 渡辺は2004年12月に初タイトルの竜王を獲得して以来、タイトルをずっと保持していたが、名人戦で敗れて18年半ぶりに「無冠」となった。今後は捲土重来を期待したい。

藤井新名人が終局直後の会見で語ったこととは

 藤井新名人は終局後の記者会見で、次のように語った。

「名人は特別な重みがある称号と思っています。それにふさわしい将棋を指せるように頑張りたいです。名人戦はほかのタイトル戦に比べて持ち時間が長い(各9時間)ので、しっかり読みを入れて指すことができ、収穫の多いシリーズでした。名人は子どもの頃からの憧れでしたが、これで終わりではなく、先をしっかり見据えていきたい気持ちです。また、見ている人に楽しんでもらえる将棋を指したいです。

 羽生先生の七冠は全冠制覇で、特別なものと思っています。自分としては並んだという意識はありません。(八冠獲得に向けての質問に)王座戦はまだ挑戦を意識する段階ではなく、勝ち進めるように頑張りたいです」

 藤井名人が語ったように、このたびの偉業はゴールではない。さらなる金字塔を打ち立ててほしい。

 対局翌日の新聞やネット上には、一流棋士や愛棋家著名人の祝福コメントが載った。その中で加藤一二三・九段(83)の「藤井さんからタイトルを奪えばヒーローになります。将棋界を盛り上げてください」というコメントが面白かった。

 藤井の八冠制覇を期待したい半面、それを脅かす存在の棋士の出現を待望したい、と私も思っている。

記事内で紹介できなかった写真が多数ございます。こちらよりぜひご覧ください。

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