侍ジャパンPRESSBACK NUMBER
「気持ちはわかる。でもわがままは…」ダルビッシュに吉井理人が日本ハム時代コーチングした意図「その後のメジャーでの振る舞いを見ていれば」
text by
吉井理人Masato Yoshii
photograph byToshiya Kondo
posted2023/04/30 11:02
2008年のダルビッシュ有(当時21歳)。日本ハム時代、吉井コーチはどんな働きかけをしたのか
メジャーリーグ、アトランタ・ブレーブスが1990年代後半に投手王国になったときのピッチングコーチ、レオ・マゾーニー氏がこんなことを言っていた。
「グレッグ・マダックスなんか、とんでもない質問をしてくるんだよ。ある試合のある一球を取り出して、あの投球は正解だったか間違いだったか聞いてくるんだ」
それぐらい高度な質問をしてくるので、このステージの選手には常に高度なレベルの話をし続けなければならない。エースと呼ばれるような優秀な人は、本当に高いレベルの話しか聞いてこない。いずれにしても、コーチがそこで彼らが納得できるような答えを出さないと、簡単に見限られる。
質問をしてこない選手に、あえて質問がないかを聞く必要はない。サファテ選手などは基本的におしゃべりが好きなので、その聞き役になるだけで十分だ。もちろん英語だったので、半分ほどしかわかっていなかったが、ただ「リアリィ?」と相槌を打つだけで、彼は満足していたようだ。
一流の人を育て、チーム全体にいい影響を与える
一流の選手は、自然とチームメイトから注目される。先ほどのチームBの選手は、僕がサファテ選手と話していた内容をしきりに気にしていた。ピッチングに関して、参考になる話があるのではないかと考えたのだろう。やがて、若い選手がサファテ選手にピッタリと寄り添い、さまざまなことを教えてもらっていた。
第四ステージの選手を育てれば、チーム全体にいい影響を与える。一刻も早くそういうタイプの選手を育てるコーチングをして、あとは見守ってあげる。そういう循環にしていくのがコーチングの理想だと思う。
<#1、#2からつづく>