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「ダルビッシュ選手は少年のように好奇心が…」吉井理人58歳がWBC前から絶賛だった“超メンタル”「自分への期待度が大きかった」

posted2023/04/30 11:01

 
「ダルビッシュ選手は少年のように好奇心が…」吉井理人58歳がWBC前から絶賛だった“超メンタル”「自分への期待度が大きかった」<Number Web> photograph by Hideki Sugiyama

侍ジャパンで今永昇太の練習を見守るダルビッシュ有と吉井理人コーチ。WBC前からすでに吉井氏はダルビッシュの成長を感じ取っていたようだ

text by

吉井理人

吉井理人Masato Yoshii

PROFILE

photograph by

Hideki Sugiyama

 WBC侍ジャパンで投手コーチとして世界一を経験し、千葉ロッテの監督を務める吉井理人氏(58)。ダルビッシュ有や佐々木朗希、大谷翔平といった才能を見つめてきた中で、どうすれば相手のモチベーションを高め、能力を引き出し、高い成果を挙げ、メンバーを成長させることができるのか――その考えをまとめた著書『最高のコーチは、教えない。』(ディスカヴァー)より書籍を一部転載します(全3回の2回目/#1#3も)

〈「振り返り」で課題設定の正しさを常に検証する〉

 課題設定のやり方を身につけさせる目的で実施していたのは、試合後の「振り返り」である。自分のプレーを自分で振り返ることで、選手たちにいろいろなことに気づいてほしいからだ。最終的には、考えることなく身体が勝手に動くようになってほしい。

 その前段階としては、どうしてそのプレーになったのかを自分で分析できるようになっておかなければならない。まずは、身体が勝手に動いた状態を客観的に把握させ、なぜそうなったのかを掘り下げていくことが重要である。

「振り返り」を続けることで気づきのレベルを高める

 2017年シーズンの一年間、ファイターズの若手ピッチャー三人を指名し、先発した次の日に「振り返り」をやってもらった。三人のうちの一人、A投手は、極めて劇的に変わった。はじめのうちは、振り返りをしても投球に対する意図が感じられなかった。

「キャッチャーが出したサインの通りに投げました」

「投球フォームも、いつもコーチに言われてるようにちょっと突っ込んじゃいました」

 どうしてサイン通りに投げたのか、投げたかった球種だったのか、なぜ突っ込んだ投球フォームになってしまったのか、そういう重要な点に関する考えが出てこない。いったいどうなることかと心配していたが、振り返りを繰り返していくうちに、A選手は徐々にいろいろなことに気づき始める。

「本当はこの球種をこのコースに投げたかったんですけど、キャッチャーが違うサインを出したので、仕方なく投げちゃいました」

 さらにしばらく続けると、当初とはまったく違うことを言い始めた。

「こういう点が僕の特徴なので、あの場面ではこのコースにこういう球を投げれば抑えられると思って投げました」

試合中にフォームの修正までできるようになった

 この年、A選手は調子を落として二軍に落とされた。しかし、振り返りがだんだん上手になって気づきが増えるとともに、調子を上げていった。そして、ふたたび一軍に上がり、安定した成績を残せるようになった。

 振り返りによって、A選手は試合中にフォームの修正までできるようになった。試合中に自分の投球フォームの状態が自分でわかるようになり、その修正まで自分で工夫してできるようになった。まさに劇的に変化した事例だ。

 しかし、シーズン終了後の秋のキャンプでは、前の状態に戻ってしまったようだ。試合から離れたことで、忘れてしまった可能性がある。このように、一進一退するケースも少なくないので、コーチは根気強く意識づけをしていく必要がある。

【次ページ】 質問で深掘りし、相手にとことん語らせる

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