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「気持ちはわかる。でもわがままは…」ダルビッシュに吉井理人が日本ハム時代コーチングした意図「その後のメジャーでの振る舞いを見ていれば」

posted2023/04/30 11:02

 
「気持ちはわかる。でもわがままは…」ダルビッシュに吉井理人が日本ハム時代コーチングした意図「その後のメジャーでの振る舞いを見ていれば」<Number Web> photograph by Toshiya Kondo

2008年のダルビッシュ有(当時21歳)。日本ハム時代、吉井コーチはどんな働きかけをしたのか

text by

吉井理人

吉井理人Masato Yoshii

PROFILE

photograph by

Toshiya Kondo

 WBC侍ジャパンで投手コーチとして世界一を経験し、千葉ロッテの監督を務める吉井理人氏(58)。ダルビッシュ有や佐々木朗希、大谷翔平といった才能を見つめてきた中で、どうすれば相手のモチベーションを高め、能力を引き出し、高い成果を挙げ、メンバーを成長させることができるのか――その考えをまとめた著書『最高のコーチは、教えない。』(ディスカヴァー)より一部転載します(全3回の3回目/#1#2からの続き)

 〈第一ステージ「初心者(新人)」は、まず指導行動で技術を鍛える〉

 ここから、それぞれのステージの内容を明らかにするため、具体例を挙げていこうと思う。それによって、各ステージのイメージをつかんでいただきたい。

 まず第一ステージ。プロ野球でいえば、高卒ルーキーがここに当たる。大学、社会人出身でも、基本的なことがわかっていない選手、自分のやり方が確立できていない選手がいれば、このステージに当てはまる。このステージに該当する選手は、技術の基本を細かく教えていく。

部活の引退後からプロの練習開始までの“ブランク”

 ピッチングフォームの修正、「今日は遠投を中心に行う」「明日はノースローデー」などの練習内容の指示、その練習を実施するタイミングの指示など、コーチが考えたメニューをひたすらやらせる。

 高卒ルーキーは、部活の引退後からプロの練習が始まるまでの期間は、自分たちの感覚で勝手に練習している。そのため正しい練習ができていない。

 結果として、投げる感覚や身体を動かす感覚を忘れてしまっているため、その感覚を呼びさまさせることをメインテーマとする。先輩選手と一緒の練習メニューに取り組んでも、その感覚は戻ってこない。だから基礎の基礎、小学生に九九を丸暗記させるのと同じような感覚で指導する。

 自らの現状を把握できていない選手は、やり方もわかっていないので、「おまえらはまだそのレベルではないよ」とはっきり言いながらやらせていく。

 一人前と認めるまでは、このステージで二年から三年は過ごさせる。できる選手はすぐに次のステージに上がっていくが、多くの選手はできないことのほうが多い。少しずつ自分の感覚に任せていくようにするが、その変化も急激なカーブは描かない。

自らの状況を把握できないうちは、まず基礎を徹底させる

 プロに入ってすぐの時期は、知識を取り入れるモチベーションが高い。あえて育成行動の指導をしなくても、コーチのアドバイスに耳を傾ける。コーチのアドバイスを実践すればするほど上達するので、モチベーションはさらに上がる。

 それでも、先輩選手がブルペンで投げたり、試合で投げたりする姿を見て焦る選手もいる。プロになったのに、中学生がやるような基礎の基礎をどうしてやらされるのか、と反発する選手も出てくる。「投げたいです、投げたいです」と直訴してくる選手もいるが、我慢させて指示通りのメニューに取り組ませる。

【次ページ】 “若手の中級者”に対してはどう接すればいい?

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