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「福投手もきっと大丈夫」DeNA三嶋一輝は同じ難病に苦しむ“闘病仲間”の名をボールに記した…本人が明かす「本当はヒーローインタビューで言いたかったんですけど…」
text by
石塚隆Takashi Ishizuka
photograph bySankei Shimbun
posted2023/04/24 11:04
4月9日、340日ぶりのハマスタ復帰のリリーフ登板で勝利に貢献し、お立ち台にも上った三嶋一輝。中日側スタンドに投げ込まれたボールには…
「僕って、あまり喜怒哀楽を人に見せたくないというか、わざとやっているっていうか……よく若いとき現役時代の三浦(大輔)監督に言われてたんですよ。“一輝はもっと自分を出せ”って。けどね、泣いたり、良かったねって思うのは、全部終わってからでいいし、まだ戦っている最中。僕は次が大事だってどうしても思っちゃうんですよ」
この三嶋の自分を律し、苦しいときでも前を向き進みつづける突破力こそが、難病からの帰還を可能にした要因かもしれない。
歩行困難から“前例のない手術”に踏み切るまで
三嶋は多くを口にしないが、手術前の症状は、下半身のしびれによる歩行困難や頻尿など日常生活に支障をきたすほどだったという。プロの投手として完全復活できた事例がなかった通常の手術のリスクを考え、保存治療の可能性も探ったが、もはやままならない状況。セカンドオピニオンを尋ねてまわり、三嶋は納得した上で手術に踏み切った。主治医から勧められたのは、内視鏡で行う『最小侵襲脊椎治療(ミスト)』という最先端の手術だった。過去、この術式を用いたアスリートはおらず、三嶋が初のケースとなった。
結果的に「この選択が良かった」と、三嶋は確信を込めて言う。
「2週間入院をして、その後は自宅療養。9月末からDOCK(ファーム施設)でリハビリを開始したんですけど、そこからいつ投げられるのか逆算したんですよ。自分としては消極的よりも積極的に。初めての手術方法でしたし、絶対に成功例にしたかった」
元ロッテ・南昌輝の協力
そんな三嶋の心強い援軍となってくれたのが、ロッテでリリーフとして活躍し、2018年に同病を患い手術をしていた南昌輝(2021年に現役引退)だった。
「南さんにいろいろ相談に乗ってもらって、投げ始めたころの動画とかも見せてもらったんですよ。本当にありがたかったですね。南さんは、術後2カ月後には投げられるようになると言っていて、いろいろと参考にさせてもらいました」
前例が少ないゆえに、リハビリやトレーニングはこれ以上なく慎重になったが、手術は成功し三嶋を悩ませていた症状や違和感はすっかり収まっていた。また昨年の春先に無理をして投げたために発症していた右肩痛も癒えていた。
一番苦労したのは…
「未知数ではあったんですけど、その後はイメージ通り進んでいきましたね。10月末にはダッシュとか走ることができて、11月半ばには50~60メートルのキャッチボールができるようになりました。そして12月頭にはリハビリ組を卒業して、キャッチャーを座らせて投げられるようになったんです。最初は130~135キロぐらいの強度だったと思います」