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「福投手もきっと大丈夫」DeNA三嶋一輝は同じ難病に苦しむ“闘病仲間”の名をボールに記した…本人が明かす「本当はヒーローインタビューで言いたかったんですけど…」
posted2023/04/24 11:04
text by
石塚隆Takashi Ishizuka
photograph by
Sankei Shimbun
あの日、ヒーローインタビューで言葉を発したあの瞬間、横浜DeNAベイスターズの三嶋一輝の眼に、光るモノを見たような気がした。
「いやいや、そんなことないですよ。まあ、そういう風に見えたって、めちゃくちゃ言われるんですけどね」
頼りになる男がチームに帰ってきた
三嶋は少しだけ反発して言うと苦笑した。負けず嫌いなこの感じ。頼りになる男がチームに帰ってきたことを実感した。
4月9日の中日戦(横浜スタジアム)、三嶋は7点リードの7回にマウンドに上がり、1イニングを無失点で抑えた。MAX152キロのストレートと切れのあるスライダーとフォーク。クローザー時代を彷彿とさせるピッチングだった。
三嶋は昨年8月末、国が難病指定している『胸椎黄色靭帯骨化症』の手術を行った。以来、プロ野球選手の症例も少なく先行きがはっきりと見えない中、必死のリハビリとトレーニングをつづけ、公式戦では340日ぶりとなるハマスタのマウンドへと帰還した。
早くお立ち台に上げさせたいって気持ちが嬉しかった
試合後、久しぶりにお立ち台に上がった三嶋は、「ここに帰ってくるためにがんばってきたので、すごく嬉しいです」と語り、いつまでもやむことのない万雷の拍手を体いっぱいに浴びた。おもむろにスタンドを見上げる、あの感慨深くもクールな三嶋の表情は忘れられない。
「ファンの声援や拍手はもちろん、やっぱり球団がね、早くお立ち台に上げさせたいって気持ちが嬉しかったですよね。ただ、個人的には帰ってきたなという気持ちよりも、今からがスタート。まずは1年間、自分の務めを果たさなきゃなって」
あまり喜怒哀楽を人に見せたくない
嬉しさや感謝の気持ちはもちろんあるが、三嶋は性格上、それを赤裸々に出すのを好まない。「あいかわらずですね」と親しみを込め伝えると、三嶋は照れたようにスッと目線を外し言うのだ。