将棋PRESSBACK NUMBER
〈名人戦先勝〉藤井聡太竜王が小4で「名人をこす」と記して10年後の“頂上決戦”、渡辺明名人「最大の関心は…」それぞれの思いとは
text by
田丸昇Noboru Tamaru
photograph by日本将棋連盟
posted2023/04/07 17:00
椿山荘で熱戦の幕が開けた第81期名人戦。渡辺明名人に藤井聡太竜王が挑んでいる
2日目に入ると、藤井は△9五歩以下の順で端攻めにいった。渡辺は▲2五歩の継ぎ歩で2筋から攻め込んでいった。その後、猛烈な攻め合いが繰り広げられた。
藤井は、持ち時間が各9時間と最長の名人戦では、持ち時間を存分に使って考えたいと語っていた。本局では中盤で98分、107分と大長考した。渡辺も中盤で72分、43分と長考した。さらに藤井が初めて経験した2日目の夕食休憩(17時~17時30分)で自分の手番となり、用意された「おにぎり」を食した。渡辺は「天ぷらそば」を注文した。
藤井は夕食休憩以降、飛車で8筋の敵陣を破って竜を作った。自信はそれほどなかったという。しかし、自陣の4二にいた角を△1五角と飛び出し、寄せに活用する順で優勢となった。渡辺は相手玉に懸命に迫っていったが、藤井に冷静に対処されて少しずつ足りなかった。藤井が110手目に△2七角と敵陣に打った手が決め手となり、渡辺は投了に追い込まれた。終局時間は20時39分。残り時間は渡辺1分、藤井22分。
両者は対局後「苦しい」「自信がない」と語った
渡辺は「指し掛け(1日目の終了局面)のところは少し苦しいと思っていましたが、その差が最後まで埋まらないような将棋でした」と、終局後に語った。一方、藤井は「全体的に自信がない局面が多かったですが、終盤で自分の玉に王手がかかりにくい形となり、それを生かすことができました」。
両者は「少し苦しい」「自信がない」と語ったが、飛車の働きの差が最後にものを言った。藤井の竜は敵陣で寄せに働き、渡辺の飛車は自陣にいるだけだった。
藤井竜王は初舞台の名人戦で、堂々たる指し方で勝利した。名人獲得と七冠達成に向けて、幸先の良いスタートを切り、渡辺名人は緒戦に敗れ、4連覇に向けて厳しいスタートとなった。ただ勝率が圧倒的に高い藤井が先手番の第2局に勝てば、大きな1勝となってシリーズを互角に戦えるだろう。
重要な意味を持つ名人戦第2局は、4月27日・28日に静岡県静岡市「浮月楼」で行われる。
記事内で紹介できなかった写真が多数ございます。こちらよりぜひご覧ください。