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〈名人戦先勝〉藤井聡太竜王が小4で「名人をこす」と記して10年後の“頂上決戦”、渡辺明名人「最大の関心は…」それぞれの思いとは
text by
田丸昇Noboru Tamaru
photograph by日本将棋連盟
posted2023/04/07 17:00
椿山荘で熱戦の幕が開けた第81期名人戦。渡辺明名人に藤井聡太竜王が挑んでいる
最新のインタビューでは、「名人は時代を代表する地位という印象を強く持っています」と語った。
名人戦が同じ2日制のタイトル戦(竜王戦、王位戦、王将戦)と違う点は、持ち時間が各9時間(前記タイトル戦は各8時間)と最長であることだ。終局時間はそれだけ遅くなりがちで、体力も勝負のうちといえる。
昨年の名人戦(渡辺名人-斎藤八段)では、5局のうち3局の遅い終局時間は20時~21時台だった。昨年の竜王戦(藤井竜王-広瀬八段)では、6局のうち2局の遅い終局時間は18時台だった。
夕食休憩がある名人戦
また、名人戦の2日目では、戦いが大詰めに差しかかる17時から17時30分に休憩時間があり、対局者に軽い食事が出る(前記タイトル戦は終局まで指し続ける)。
藤井にとって、それは初めての経験である。貴重な考慮時間に充てるか、夜戦に備えて栄養補給するか、悩ましい選択といえる。今年の王将戦(藤井王将ー羽生九段)の2日目・15時の「おやつタイム」では、ケーキなどの固形物は辞退し、全局でジュース類を注文した。長時間の戦いが予想される名人戦では、渡辺が注文した食事に倣うかどうか、考えてみるという。
ちなみに、渡辺が昨年の名人戦の2日目に注文した夕食は、主にそば、うどんの麺類で、いなり寿司や天ぷらを添えた。名人戦の夜の激闘を支える2日目の夕食メニューにも注目していただきたい。
「子どもの頃からの憧れ」「棋士として大きな幸せ」
その名人戦第1局の前夜祭で、決意表明を次のように述べた。
藤井「名人という言葉には、子どもの頃から憧れの気持ちがあり、その名人戦の舞台に立てることをとても楽しみに思っています。多くの方に注目される一局なので、その期待に応えられるような熱戦にできるように頑張ります」
渡辺「今年の名人戦は81期で、将棋の盤面の升目と同じ数です。大変に注目を受ける番勝負に出場できるのは、棋士として大きな幸せだと思っています。自分自身ベストを尽くして、番勝負を頑張っていきたいと思います」
名人戦第1局は振り駒によって、渡辺の先手番と決まった。渡辺棋王に藤井竜王が挑戦した今年の棋王戦五番勝負は、全4局が角換わり腰掛け銀の戦型だった。本局も出だしは角換わり腰掛け銀が予想されたが、渡辺が▲6六歩と角筋を止めて「雁木(がんぎ)」模様の手順が進んだ。予定の作戦だったと、終局後に語った。
名人戦らしいじっくりとした将棋になると思われたが、渡辺は積極的な指し方を採った。▲3五歩と突いて仕掛け、▲3六銀と進めて先攻した。藤井も△6五同桂と角取りに跳ねて反撃した。