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近藤健介はなぜ“国内組ただ一人”ずっと好調だったのか? 現地記者がWBC練習風景に見た“2つの違い”「調整不足と無縁だった」
posted2023/03/28 11:01
text by
氏原英明Hideaki Ujihara
photograph by
Naoya Sanuki
まだ練習を続けるのか――。
第5回WBCの直前に行われた宮崎合宿の取材中、選手の練習姿勢には驚かされた。全体練習はとうに終えているというのに、メインスタジアムから屋内練習場のひなた木の花ドームにバス移動で打ち込みに向かう選手たちの姿を何度も見た。
村上宗隆、山川穂高、岡本和真、山田哲人……。
すでにタイトルホルダーである彼らですら、練習のペースを緩めることはなかった。
WBC序盤の不振…なぜ?
じつは合宿中、一つの懸念があった。
今年の代表キャンプはこれまでのWBCより選手を招集する時期が早く、合宿期間が長かった。それでも、打者が投手に対する実戦の機会は少なかったのだ。
打者の場合、どれだけ完璧なスイングを作り上げたとしても、「対投手」に合わせられるかどうかがカギになる。実戦の対応は別問題だからである。選手たちも「(自分の状態がいいかどうか)試合をやってみないと分からない」としきりにコメントしていた。
2月25日にようやく壮行試合が始まったが、最初の1試合はスタメンの選手でも2打席のみで交代。より多くの選手を打席に立たせる狙いがあったが、2日目も同様。これで本当に打撃陣の調子が上がるのか、試合を見ながら一抹の不安を覚えた。
事実、山田哲人が微妙な心境をこう吐露していた。
「(前回と違って)練習期間が長いことによって、自分の練習は長くできたなぁとは思います。でも、それが結果良かったのかどうかは、大会を見てみないと分からないので、なんともいえないです。うまくいくように練習はしてますけど」
強化試合や壮行試合など、少しずつ実戦が始まっていったが、国内組の打撃陣の調整不足は否めず、大会が始まってもその懸念はなかなか払拭されなかった。
村上や山田、山川は“らしくなかった”し、やはり実戦不足で掴みきれない何かがあるのではないか、というのがWBC開幕当初の印象だった。