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近藤健介はなぜ“国内組ただ一人”ずっと好調だったのか? 現地記者がWBC練習風景に見た“2つの違い”「調整不足と無縁だった」
text by
氏原英明Hideaki Ujihara
photograph byNaoya Sanuki
posted2023/03/28 11:01
合宿の強化試合から本番に至るまでシーズン中と変わらぬ好調を維持していた選手がいた。 ヒットメーカー、近藤健介である
「最低でも犠牲フライを打たなければいけないと思ったので、高めの球を狙って行こうと思いました。高めを狙っていけば犠牲フライになりやすいので、その球を待っていました。それが甘くきたので、結果、タイムリーになりました」
次打席は貴重な追加点となるソロ本塁打。この時も「長打の出塁が欲しい」と考え、高めの甘い球を狙ったところ、スタンドに届いたのだった。
近藤はその都度、どんなバッティングが必要か、相手の配球も考慮して選択している。練習から1球もおろそかにしない準備をしているからこそ、結果につなげられたのだろう。
「手首を返さず打つ」とは?
そしてもう一つの要因について。今大会の近藤のバッティングを支えたのがフリーバッティング前の練習だ。
近藤は今年から新しいルーティンとして、試合前練習にティー打撃を取り入れている。バットを振り出した時に、手首を返さない意識で、ティーバッティングを黙々としているのだ。事実、ゲージに入る前の数分間を使って、右手、左手、両手と丁寧に使い分けながら手首の動きを確認していた。
その理由を近藤はこう語る。
「投手のレベルが上がっていくにつれてツーシームやシンカーが多くなってくると思うので、そういうボールへの対応という意味で大事な取り組みです。日本にいるピッチャーでもカットボールだったり、ツーシーム、フォークなど早い変化が多くなってるんで、そういう投手への対応も考えて今年からやるようになりました」
手元で動くボールは手首を返して打つと、ボールをこねてしまう。うまく捉えたと思っても、手首を返してしまえば、引っ掛けて凡打になりがちだ。それを防ぐための取り組みである。
とくに近年、世界有数のバッターたちは手首を返さないような打撃フォームに取り組んでいる。近藤もまたそうした取り組みから学び、“世界の戦い”を意識していたわけである。
最終成績は7試合出場、26打数9安打、1本塁打、5打点、出塁率5割、OPSは1.115の成績を残した。
日本のWBC制覇は、ヌートバーと大谷をつないだ近藤健介なくしてなし得なかっただろう。
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