酒の肴に野球の記録BACK NUMBER
「WBC優勝と栗山マジック」MVP大谷翔平の完璧二刀流、ヌートバーや村上宗隆らを信じ続け、“使えない投手”を生まず…名将な成績の数々
text by
広尾晃Kou Hiroo
photograph byNaoya Sanuki
posted2023/03/23 17:01
今回のWBCでは栗山英樹監督の手腕も光った大会だった
大谷翔平3登2先2勝0敗1S0H9.2回11振2球 率1.86
佐々木朗希2登2先1勝0敗0S0H7.2回11振2球 率3.52
山本由伸2登1先1勝0敗0S0H7.1回12振2球 率2.45
ダルビッシュ有3登1先1勝0敗0S1H6回2振0球 率6.00
今永昇太3登1先1勝0敗0S1H6回7振0球 率3.00
戸郷翔征2登0先0勝0敗0S2H5回9振3球 率1.80
宮城大弥1登0先0勝0敗1S0H5回7振0球 率1.80
大勢4登0先1勝0敗0S1H4回3振1球 率0.00
髙橋宏斗3登0先0勝0敗0S1H3回5振0球 率3.00
湯浅京己3登0先0勝0敗0S1H2.2回4振1球 率0.00
伊藤大海3登0先0勝0敗0S2H2.1回3振0球 率0.00
高橋奎二1登0先0勝0敗0S0H2回2振0球 率0.00
宇田川優希2登0先0勝0敗0S1H1.1回3振0球 率0.00
松井裕樹1登0先0勝0敗0S0H1回1振0球 率0.00
凄まじい大谷、朗希と由伸、ダルも自分の仕事を
大谷翔平は2試合先発のマウンドに立ったうえで、決勝戦の最終回にマウンドに上がり、最後は敵将トラウトを三振に切って取った。破天荒な物語と表現しても過言ではない活躍であり、想像の域を超えている。やはりMVPは彼しかいないだろう。
佐々木朗希、山本由伸は期待通りのマウンドではあったが、それでも7回少しを投げて失点している。今回のWBCの相手のレベルの高さをうかがうことができる。
ダルビッシュ有は3試合に投げたものの、すべて失点。6回で2奪三振。率直に言って調子は上がっていなかったのだと思うが、そんな中で失点を最小限にとどめるとともに、降板してからは意気消沈したり言い訳したりすることなく引き続きチームを鼓舞した。本物のリーダーとはこういう選手を言うのだろう。
左腕の今永は第2先発としていい仕事をし、佐々木、山本が準決勝で既定球数を投げた後の決勝の先発を任され期待に応えた。
他チームでは四球を連発するような乱調の投手がしばしば見られたが、日本チームにはいなかった。しっかりと準備ができていたことをうかがわせる。こういう短期決戦は試合が進むとともに「使える投手」が限られてくる。栗山監督は戸郷、伊藤、湯浅、髙橋宏を計算できる救援投手として起用した。伊藤は日本ハムのエースだが、新庄剛志監督はかねてからクローザーへの転向に言及している。今後の起用法が注目される。
ほとんどの選手に「世界の舞台」を経験させたという価値
栗山監督は招集したすべての選手に「世界の舞台」を味わわせ、二度と出来ない経験をさせようとしていた。野手組はすべて起用することができたが、1次ラウンドの後に、故障で離脱した栗林良吏に代えて招集した山崎颯一郎だけは起用することができなかった。そこは栗山監督も心残りのはずだ。1点差で緊張する場面が続いただけに、仕方がない部分も多いが――山崎も出場した選手と同様に何かしらの「収獲」を持ち帰ってほしいと思う。
今回の「世界一」は完璧と評したら言い過ぎになるかもしれないが、非常に価値の高い勝利だと言えるだろう。選手の能力をあますところなく引き出した栗山英樹監督は「名将」だった。
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