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起死回生弾・吉田正尚の“WBCへの覚悟”がスゴかった「日本が世界一だと証明できる」“120億円の男”が栗山監督の電話に即答した理由
posted2023/03/21 19:15
text by
米虫紀子Noriko Yonemushi
photograph by
Getty Images
Sports Graphic Number1069号(2023年3月9日発売)に掲載された『吉田正尚 WBCは人生設計に含まれていた』を一部抜粋して公開します。
「フィーバーしてるんですね、宇田川」
2月末、フロリダ州フォートマイヤーズでレッドソックスのキャンプに参加していた吉田正尚は、オリックスで同僚だった宇田川優希が、毎日のようにニュースになっていることが気になるようだった。
日本代表の宮崎合宿で当初なじめずにいた宇田川を、ダルビッシュ有が様々な気遣いでチームに溶け込ませ「宇田川会」「宇田川ジャパン」という言葉も生まれたという詳細を伝えると、吉田は嬉しそうに言った。
「夢があっていいんじゃないですか。誰にでもそういうチャンスがあるというのは」
どこか遠い世界のことのように微笑む。自身も同じ戦いの場に、アメリカからまもなく参戦するとは思えない穏やかさだった。
レッドソックスと122億円の大型契約
熱量を図りにくい選手ではある。感情が昂って叫んだり、声を荒げるという姿を、オリックス時代の7年間、あまり見たことがない。どんな時も穏やかな語り口は、内に秘めた熱を包み隠す。だからWBCへの思いの強さも図りかねていた。
昨年12月、レッドソックスへのポスティング移籍が決まり、オリックスの球団施設で記者会見を行った時のこと。WBCへの思いを聞かれた吉田は、淡々と答えた。
「自分としては、出場はもちろんしたいという気持ちでいるんですけど、球団の考えもありますし。1年目をスタートする前に(WBCに)ピークを持ってきて、そこからタフな160余りのゲームをこなしていくのはもちろんリスクもあると思いますし、自分だけの考えでは行けないところもありますが、意志としては伝えています」
念願だったメジャー移籍が実現し、しかも5年9000万ドル(約122億円)という大型契約。WBCは断念する可能性もあると見られた。
だが今年1月、日本代表へのメンバー入りが発表された。メジャー1年目のタイミングでのWBC出場は異例。遅ればせながら、そこで初めて吉田の本気度を知った。
改めて吉田に、WBC出場の決断について聞くと、一途な思いが伝わってきた。