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「いいスクラムハーフって、性格悪いんですよ」サンゴリアスに受け継がれる“贅沢な9番争い” 田中監督が考える流大と齋藤直人の起用法
text by
大友信彦Nobuhiko Otomo
photograph byNobuhiko Otomo
posted2023/03/10 17:00
流大(右)、齋藤直人と2人の日本代表SHを擁する東京サントリーサンゴリアス。贅沢すぎる起用法を田中監督に聞いた
だが、田中後輩はなかなかポジションを奪えなかった。そりゃあ、27歳の主将が22歳の後輩に簡単にポジションを譲るはずもない。永友先輩はキャリアを重ね、円熟味を増していた。
田中後輩が背番号9に定着したのは4年目の2001年度。26歳で迎えたシーズンだった。サントリーはこの年、東日本社会人リーグ、全国社会人大会、日本選手権に優勝し、6月にはウェールズ代表を破る金星まであげ、シーズン全勝。ジャパンセブンズの優勝も含めればシーズン5冠を達成した。
この年のサントリーの必勝パターンは、田中から永友へのSHリレーだった。田中はこの年(ウェールズ戦も含め)12試合に先発。うち11試合は後半途中で31歳の永友にバトンタッチしていた。
サントリーの看板は当時も今も「アグレッシブ・アタッキング・ラグビー」だ。先発の田中は早い仕掛けでゲームを作っていたが、後半投入される永友はゲームのスピードをさらにあげた。その高速アタックに相手チームはついてこれず、次々とインゴールを明け渡した。ファンもメディアも「永友さんが入るとすごいね」「さすがだね」と唸った。
先発でゲームを作った田中後輩としては複雑な心境だったかもしれないが――それから20年、サンゴリアス監督となった田中後輩は振り返るのだ。
「(その相手と)戦ってる間は成長しないんですよ。自分にないものを学ばないと」
それは、自身が学んだからこそ言える言葉だろう。ただ、同時にこうも付け加えた。
「そうなるためには、戦うことも必要なんですけどね」
若手時代の流も“競争”を経験
流も同様の経験をしている。
サンゴリアスに入団して2年目の2016年度、流は23歳で主将に抜擢された。流はシーズン17試合のうち15試合に先発したがフル出場はゼロ。すべての試合で後半に日和佐篤(現コベルコ神戸スティーラーズ)に交代。日本代表51キャップの29歳は劇的にゲームをテンポアップし、後半に突き放す必勝パターンを確立した。サンゴリアスはシーズン17戦全勝でトップリーグと日本選手権の2冠を達成している。
そして現在。齋藤は早大2年時から大学のオフ時はサンゴリアスの練習に参加。同じSHに日本代表の流がいるのは先刻承知で加入した。ルーキーシーズンから背番号9を流から奪い取るつもりだった。
だが1年目、公式戦10試合のうち先発SHを任されたのは2試合だけ。リーグワン初年度となった2年目のシーズンは先発が6試合に増えたものの、勝負のかかったプレーオフでは流が9番のジャージーを着た。
その頃の齋藤は、流に勝ちたいということばかり考えていた。