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「いいスクラムハーフって、性格悪いんですよ」サンゴリアスに受け継がれる“贅沢な9番争い” 田中監督が考える流大と齋藤直人の起用法
text by
大友信彦Nobuhiko Otomo
photograph byNobuhiko Otomo
posted2023/03/10 17:00
流大(右)、齋藤直人と2人の日本代表SHを擁する東京サントリーサンゴリアス。贅沢すぎる起用法を田中監督に聞いた
「こんなことがありました」と田中監督は明かす。
流は休日になるとチームメイトと連れだってゴルフに出かける。齋藤は休みの日もグラウンドに出て個人練習をしたり、あるいは次のパフォーマンスを高めるために休養することを自分に課していた。田中監督はある日、齋藤から「なんでゴルフなんて行ってるんですかね?」という呟きを聞いた。田中監督は諭したという。
「ゴルフだけやってるんじゃないんだよ。そういう時間を一緒に過ごすことで、チームメイトはどんなヤツなのか、最近どんなコンディションなのか。家族がどんな感じなのか。いろんな情報を手に入れてるんだ。それはSHとしてのコントロールに繋がるんじゃないか?」
そして齋藤は、勝ち負けではなく、流の良さを自分の学びにした上で、自分の持ち味を出してチームをドライブすればよいのだと「覚醒」した。
田中監督は言う。
「レフリーとのやりとりとか、セットプレーが始まる前のFWへの声かけとか、直人はすごく成長してると思う。それは流も同じで、ラン、ディフェンスも含めてすごくよくなっている。世界レベルのSHが2人いるというのはサンゴリアスの強みです」
その要素は、サンゴリアスの選手の起用に大きく影響している。
「スタートで出る15人がベストメンバーというわけではないです。今、求められているのは23人でどう80分を戦うか。つまり、8人のフィニッシャーをどう戦略的に使っていくか。相手が脅威と感じる選手を出して行ければそれは強みになる。ワイルドナイツは堀江(翔太)が出てくると空気が変わっちゃうじゃないですか(笑)」
「スタートで出る難しさはある」
サンゴリアスは3月5日、ヴェルブリッツに敗れた。齋藤-流のリレーは、勝利を掴むことはできなかった。
「試合を通じて、チームのエナジーが少し足りなかった。リーダーとして、1週間の準備も、試合中の対応も、改善すべき点があると今日の試合で感じました」
試合後の会見でそう言った齋藤は、練習を再開した7日の府中グラウンドで言った。
「スタートで出る難しさはいつも感じています。でも経験以上のものはないですから。毎週学んでいます」
気負いのない、サバサバした表情だった。
9日に発表された11日のワイルドナイツ戦のメンバーで、齋藤と流は背番号を入れ替えた。これまでの試合で学んだことを、2人は出る順番を変えて、役目を変えて、どのように発揮するだろうか。それはサンゴリアスをどう進化させていくだろうか。そして終盤に向け、サンゴリアスの9番はどちらが背負っていくだろうか。
改めて思う。5月下旬のリーグワンファイナルを戦うのは開幕時のチームでも、今のチームでもない。16試合を戦い抜いて、成長したチームなのだ。
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