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「いいスクラムハーフって、性格悪いんですよ」サンゴリアスに受け継がれる“贅沢な9番争い” 田中監督が考える流大と齋藤直人の起用法
posted2023/03/10 17:00
text by
大友信彦Nobuhiko Otomo
photograph by
Nobuhiko Otomo
「流はすごい、良い選手ですよ。あれだけの選手はなかなかいない。日本のスクラムハーフでは一番でしょう」
2月のある日、府中市のグラウンドで行われた練習後、東京サントリーサンゴリアスの田中澄憲監督は流大(ながれ・ゆたか/30歳)についてそう言った。自身もスクラムハーフ(以下、SH)として明大~サントリーで活躍。日本代表にも7人制と15人制の両方で選ばれた経験を持つ。そんな指揮官が、自チームのSHを絶賛した。
そのとき流は、今季のリーグワンで1試合も先発していなかった。全てベンチスタートだったのだ(11日の第11節・埼玉パナソニックワイルドナイツ戦は先発と発表)。代わりにここまで9番をつけて出場してきたのは今季からチームの共同主将を務めている25歳の齋藤直人だった。指揮官が「日本一」とまで推すベストプレーヤーが先発していない。しかも同じポジションの違う選手が主将を務めている。これは、ちょっと異例ではないか。
流が「日本で一番」その理由は?
流の良さとはどんなところですか? その問いに指揮官は答えた。
「流の良さは目に見えないところ、わかりやすくないところにあるんですよね。簡単に言うと、何にでも対応できる。苦しいときに打開策を導き出せる。遂行できる」
そう言うと、田中監督は具体例をあげてくれた。
「横浜との試合なんか、良い例だったと思いますよ」
第3節の横浜キヤノンイーグルス戦は、前半18分にSOアーロン・クルーデンが危険なプレーでレッドカードで退場。残り60分以上にわたって14人で戦うことになってしまった。そもそもイーグルスは、サンゴリアスが開幕戦で敗れたクボタスピアーズ船橋・東京ベイと前節対戦して引き分けていた難敵だった。サンゴリアスは13-8とリードして折り返したが、田中監督はハーフタイムでSHを齋藤から流に交代。後半もトライの取り合いで一時は2点差に迫られる厳しい展開だったが、最終的には32-23で勝利をつかんだ。