Jをめぐる冒険BACK NUMBER
キーワードは継続・規律・逆算・広いスペース…浦和スコルジャ新監督のアイデアとは? リカルド体制と何が変わったのか〈J1キャンプレポ〉
text by
飯尾篤史Atsushi Iio
photograph byAtsushi Iio
posted2023/01/31 11:04
鳥栖との練習試合で仕掛けるブライアン・リンセン。スコルジャ新体制での爆発が期待される1人である
後方からのビルドアップは、ゴールキックも含めて昨シーズンまでの手法を取り入れており、例えば、ボランチが最終ラインに落ちてビルドアップをヘルプするサリーダ・ラボリピアーナを行うかどうかの判断も、状況に応じて選手たちに委ねられているようだ。
「練習ではビルドアップにも取り組んでいますけど、去年と重なる部分がかなりあるので、チーム全体としてその財産でやれているのは大きいですね」
トップ下を務める小泉佳穂は、そう証言する。
外国人の新監督は、若手の抜擢を含めて思い切った選手起用を行う傾向があるが、昨季のポジション内の序列が踏襲されている点からも、スコルジャ監督がこれまでのベースをいかに大切にしているかが窺える。
“準備してきたアイデア”で入念に取り組んでいるのは?
一方、上積みとして真っ先に取り組んだのが、ハイプレスだった。「ハイプレスの回数を増やしたかった。早い段階で、ハイプレスをかけるときのルールを選手たちに伝えた」と指揮官自身も話しているから、“準備してきたアイデア”のひとつがハイプレスだったのは間違いない。
さらに、入念に取り組んでいるのが、相手陣内での攻撃の形である。
ハーフウェイラインまでは安定してボールを運べるが、その先はどうするのか――。
それが、前体制が抱えていた課題だった。アタッキングサードではウイングの突破力頼みという側面もあったが、スコルジャ監督は前体制が築いたビルドアップに攻撃のアイデア、狙い、規律、パターン、精度といったものを加えようとしている。
例えば、1月29日に行われたサガン鳥栖との練習試合で生まれた3つのゴールは、チームの狙いが体現されたものだった。
3ゴールともすべて右サイドを攻略した酒井宏樹のクロスが、ブライアン・リンセンの2ゴールと興梠慎三のゴールに繋がっている。
ボールを繋ぎながら相手を動かして生まれたスペースに素早くボールを運び、走り込んだ酒井のクロスから生まれたゴールもあれば、狭いスペースでボールを奪って広いスペースに展開し、酒井のクロスから生まれたゴールもあった。
酒井のクロスからという形は同じだが、クロスに至る過程は異なっており、いずれの場合も今季のチームが狙っている形だったのだ。岩尾が説明する。
「まず広いところを見つける、みんなで広いところにボールを持っていこう、というところからスタートしている。もともと広いスペースさえ与えられれば、個で違いを作れる選手がたくさんいる。昨年は狭いスペースでもそれを発揮しようとして奪われ、カウンターを受けるシーンが散見されましたけど、今年は意図的にスペースを作ってそこにボールを運んで、クオリティのある選手でスピードを上げるということがスマートにできている」
選手たちの言葉から探る新指揮官の目指すスタイル
ほかにもキャンプ中に発せられた選手たちの言葉を聞けば、指揮官の目指すスタイルがより鮮明にイメージできるかもしれない。