Jをめぐる冒険BACK NUMBER
キーワードは継続・規律・逆算・広いスペース…浦和スコルジャ新監督のアイデアとは? リカルド体制と何が変わったのか〈J1キャンプレポ〉
posted2023/01/31 11:04
text by
飯尾篤史Atsushi Iio
photograph by
Atsushi Iio
リーグ優勝を狙ううえで最も欠けていたものを、浦和レッズはようやく手に入れたのかもしれない。
ひと言で言えば、継続性――。
突き抜けた存在になるためのベース、と言い換えてもいい。
浦和はこの十数年、フォルカー・フィンケ、ゼリコ・ペトロヴィッチ、ミハイロ・ペトロヴィッチ、堀孝史、オズワルド・オリヴェイラ、大槻毅……と監督が代わるたびに志向するスタイルがあちらへ行ったり、こちらへ行ったりして、なかなか安定しなかった。
既存の戦力が新監督のスタイルと合わず、選手を大幅に入れ替えることも繰り返してきた。
そうしたもったいない状況に終止符を打ち、スタイル構築とタイトル獲得を託すべくスペイン人のリカルド・ロドリゲス前監督を招いたものの、わずか2年で決別することになったときには、歴史はまた繰り返されるのかと思われた。
だが、こうした悪しき慣習をいよいよ断ち切れそうなのだ。
気鋭のポーランド人指揮官は前体制のベースを…
2023年シーズンの新監督として招かれたのは、ポーランド人のマチェイ・スコルジャ監督。ポーランドのヴィスワ・クラクフとレフ・ポズナンでリーグ優勝を4度経験し、自国の代表監督就任も期待される新進気鋭の指揮官である。
新監督たるもの、自身のカラーを前面に押し出そうとしてもおかしくないが、沖縄キャンプでは前体制のベースをうまく引き継ぎ、チームを着実に前進させている。
その引き継ぎ方は、まるで内部昇格の監督のようにスムーズだった。
「人の配置や人の動くタイミングは少し異なるところもありますが、ビルドアップを放棄せず自分たちがボールを保持して前進する姿勢は、これまでと変わらないですね」
そう語ったのは、新体制でもチームの中心となりそうな、ボランチの岩尾憲である。
「まったく新しいサッカーをしている感覚はないです。ここは良いけど、ここは改善しないといけないっていうところを、監督は非常によく理解されていると思います」
「リカルド監督が良い仕事をしていたことが感じられた」
なぜ、スコルジャ監督はスムーズにチームを引き継げたのか――。
その理由は、指揮官自身が明かしている。
「日本に来る前に浦和の試合映像をたくさん見て、いろいろなアイデアを準備してきた。リカルド監督が良い仕事をしていたことが感じられた。その良いところは残していきたいと思っている」
さらに、「レフ・ポズナンでやっていたことと同じルールを持ち込んでいるが、Jリーグに合わせていく部分も出てくる」という言葉を聞けば、柔軟さを備えた指揮官であることが分かる。
スコルジャ監督の言う「良いところ」――それは、前任者が最もこだわりを持っていたビルドアップの部分だ。