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ラグビーPRESSBACK NUMBER
ラグビーを辞めた早稲田のキャプテンは今……違和感が消えなかった就職活動、イギリス留学で見つけた新しい“挑戦”は「ブルー」と「パリ五輪」
posted2023/01/21 11:00
text by
中矢健太Kenta Nakaya
photograph by
Yohei Osada/AFLO SPORT
2022-23シーズンの大学ラグビーは、帝京の2連覇で幕を閉じた。リーグワン所属チームへの加入が決まっている4年生は、今季から新設された「アーリーエントリー制度」で、卒業を待たずして戦いの場を移すことができる。リーグワン全体では、すでに36人のアーリーエントリーを発表。選手権決勝後のミックスゾーンでは、ある選手が「明日から(新チームに)合流なんですよね」と呟いていた。
そんな中、まわりとはまったく違うベクトルに向けて挑戦を続けている男がいる。
2年前、早稲田大の主将を務めた丸尾崇真。当時の選手権決勝、天理大に敗れた直後の会見で「ラグビーは第一線を退きます」と、丸尾は留学する意向を語った。
24歳になった彼はいま、相容れない二兎を追っている。オックスフォード進学と、7人制ラグビー日本代表として2024年パリ五輪でのメダル獲得。オックスフォードはともかく、ラグビーは辞めたはずだった――。
早稲田のキャプテンがラグビーを辞めた
9歳からラグビーを始めた丸尾はもともと、プロのラグビー選手になりたいという気持ちはあまりなかった。早稲田で日本一になる。幼少期からそれがすべてだった。
早大卒業をもってラグビーを辞めて就職する。同期の中でも就活を始めたのは早い方だった。まわりからは「嘘だろ?」「冗談言うな!」と散々言われたが、丸尾に迷いはなかった。ただ、リーグワン(当時トップリーグ)の複数のチームがオファーをくれた。一応、それを選択肢として保持しながら就活を続けた。
しかし、続ければ続けるほど、腑に落ちなかった。それでも多くの人は、どうにか自分を納得させ、就職して働く。社会に出て、自立する。そうやって大人になっていく。
ただ、丸尾にはそれができなかった。20年3月に参加した、ある企業の集団面接。皆同じ色のスーツを着て、隣に座る学生は自己アピールを繰り返す。それがすべてうわべの言葉に聞こえた。仮にその学生が少し話を誇張していたとしても、それを責めるのは野暮だ。
だが、丸尾には受け入れられなかった。そこで気づいた。そもそも、今の自分に就職という選択は合っているのか。
抱えた違和感が消えることはなく、まわりが本面接を受け始める4月には、就職活動を放棄した。大人にはなりきれなかった。
結局、何がしたいのか。思い巡らす中でふと浮かんできたのは、「オックスフォードで学び、バーシティマッチに出ること」だった。