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羽生結弦の“気遣い”に音響スタッフも驚いた…アイスショーも担当した矢野桂一に“羽生が掛けた一言”「そういう風に思ってくれてたんだな」

posted2023/01/23 17:01

 
羽生結弦の“気遣い”に音響スタッフも驚いた…アイスショーも担当した矢野桂一に“羽生が掛けた一言”「そういう風に思ってくれてたんだな」<Number Web> photograph by Asami Enomoto

2019-20シーズンなどで使用された『Otonal』は、プロローグの準備で苦戦したプログラムでもあった

text by

松原孝臣

松原孝臣Takaomi Matsubara

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Asami Enomoto

大きな話題を集めた、羽生結弦プロ転向後初のアイスショー「プロローグ」。長年フィギュアスケートに携わり、羽生とも関係の深い音響デザイナーの矢野桂一氏が、「プロローグ」の知られざる舞台裏、羽生との交流について明かした。《全3回のインタビュー2回目/#3につづく》

◆◆◆

「たぶん、企画から構成から、音楽の部分もできる限り自分でやりたいという思いがあったのだと思います」

 羽生結弦のプロとしての初のアイスショー「プロローグ」を振り返る中で音響を担当した矢野桂一氏は振り返る。そう感じたのは、依頼があったときに、構想が固まっていたことに由来する。

「話を聞いた最初は、何人かが出てやるのかなと思ったらソロだと聞いて、驚いたんですね。すると、ビデオの映像を交えて演技をして、振り返りがあって曲のどの部分を流して、と説明いただいて。それでも大丈夫かなとは思いましたが、それはともかく、構成は羽生さんの方でしっかりできていましたね。それを携わる人間がフォローしていくという形でした」

 その一人、矢野氏もまた、サポートに力を尽くした。万事がスムーズに進んだわけではなく、その中で全力を注いだ。

連絡が取れない…難航した「曲の権利問題」

 例えば、公演の開幕を前に難航している作業があった。曲の権利関係をクリアするという問題だ。

「競技会であれば、テレビ局の方から包括で曲の使用の申請ができますが、アイスショーとなると、1曲1曲、作曲者や事務所、レコード会社などすべての承諾を得なければいけないのです。その役目を担当する人たちと密に連絡を取り合いながら進めていくことになりました」

 演技を披露したくても、曲の使用の承諾が得られなければかなわない。手続きで苦労したプログラムの1つは2018-2019、2019-2020シーズンのショートプログラム『Otonal』だった。

「どうしても連絡をつけることができなくて、(11月の)横浜公演ではできませんでした。でも羽生さんは演じることを切望していました」

 連絡がつかない、つまり承諾を得られない中、実現するための可能性を探っていった。矢野氏が思いついたのは異なる音源を使用することだった。

 2020年1月、「羽生結弦プログラムコンサート ~Music with Wings~」と題したコンサートが行われた。羽生の演じたプログラムの曲をフルオーケストラが演奏し、その音楽を場内に流れる演技映像とともに楽しむという公演だ。このとき、矢野氏はオペレーターを務めていた。

【次ページ】 代替策として矢野がとった方法とは?

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