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羽生結弦「僕が表現したいものだけ、つなぎました」アイスショー前、音響デザイナーが羽生本人から相談されたこと「編集も本当にうまくなった」
posted2023/01/23 17:00
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph by
Asami Enomoto/JMPA
2022年11月に横浜、12月に八戸の2会場で計5公演が開催された羽生結弦のアイスショー「プロローグ」。プロに転向後初のアイスショーであり、出演するスケーターは羽生のみということで、始まる前から大きな話題を集め、盛況のうちに幕を閉じた。
壮大なチャレンジでもあったこのアイスショーに音響として参加したのが矢野桂一氏である。
長年、フィギュアスケートの大会やアイスショーの音響を担い、また選手が演じるプログラムの曲の編集にも携わってきた、まさにフィギュアスケートをよく知る音のプロフェッショナルである。とりわけ羽生とは、数々のプログラムの編曲を手がけたほか、アイスショー等にも音響スタッフとして参加するなど交流してきた。羽生をよく知る一人である矢野氏が「プロローグ」の舞台裏、そしてプロスケーターとしてスタートを切った羽生結弦について語った。《全3回のインタビュー1回目/#2、#3へつづく》
壮大なチャレンジでもあったこのアイスショーに音響として参加したのが矢野桂一氏である。
長年、フィギュアスケートの大会やアイスショーの音響を担い、また選手が演じるプログラムの曲の編集にも携わってきた、まさにフィギュアスケートをよく知る音のプロフェッショナルである。とりわけ羽生とは、数々のプログラムの編曲を手がけたほか、アイスショー等にも音響スタッフとして参加するなど交流してきた。羽生をよく知る一人である矢野氏が「プロローグ」の舞台裏、そしてプロスケーターとしてスタートを切った羽生結弦について語った。《全3回のインタビュー1回目/#2、#3へつづく》
◆◆◆
アイスショー「プロローグ」は、スケーターとしてただ一人の出演者であった羽生結弦が約90分を滑り切り、またショーそのものも優れた構成と演出がなされ、完成度の高さから称賛を浴びた。
公演には、羽生ならではの音楽、音への鋭い感性やこだわりもまた、込められていた。
「6分間練習」の曲は、新たに編集されたもの
幕開けは「6分間練習」であった。6分間練習とは、試合のとき、滑走する同グループの選手が演技の直前に行う練習のことだ。これまでのアイスショーになかった場面は強烈なインパクトを与えた。また試合さながらの形式をアイスショーの冒頭に持ってきたことに、羽生のショーに懸ける思いが伝わってきた。
この6分間練習では2020-2021、2021-2022シーズンのフリーで使用し北京五輪でも演じた『天と地と』の曲がバックグラウンドで流れていた。
ただ、試合のプログラムで使用していたものとは異なっていた。プログラムでの長さは4分ほど。6分間練習には長さが足りないため、新たに編集された曲であったからだ。