酒の肴に野球の記録BACK NUMBER
オリ比嘉幹貴40歳=3600万円、宮城大弥21歳=8000万円の“年俸格差”…「労多くして功少なし」リリーフの待遇を考えるべき時では
text by
広尾晃Kou Hiroo
photograph byNanae Suzuki/Hideki Sugiyama
posted2022/12/21 17:46
比嘉幹貴と宮城大弥。オリックス日本一に欠かせない2人である一方、持ち場によって“年俸格差”が生まれている
ノースロー調整からキャッチボール、少ない球数の投げ込みなど、投手コーチやトレーナーと相談しながら徐々に肩肘を作っていくことができる。相手チームの打者への作戦も立てることができるし、配球の組み立てもできる。
そして近年のプロ野球では実質的に選手ごとの「球数制限」も実施されている。肘、肩、腰の消耗度はモーションシンセサイザーなどの機器によってオンタイムで計測され、異状が見つかれば、すぐにコーチは投球をやめさせる。
しかし救援投手は、疲労が蓄積していても「お前しかいないから」と言われてマウンドに上がることがしばしばある。
「球数制限」の概念はリリーフにない?
筆者は数年前から「球数制限」についての取材をしてきた。「球数制限」とは投手の肩肘を守るために1試合に投げる投球数や登板間隔を制限するというものだ。
しかしこれは基本的に先発投手を対象としており、救援投手は想定されていない。そもそも毎日試合をするのはプロ野球だけだ。救援投手という概念は、アマでは確立されていない。
MLBでも、救援投手の酷使にはそれほど注意が払われていない印象がある。
今季、MLBで最も登板試合数が多かったのはブルージェイズのアダム・シンバーとガーディアンズのエマニュエル・クラセの77試合。全試合の47.5%に出場している(NPBではDeNA伊勢大夢が71試合、全試合の49.7%に出場)。
しかし32歳のシンバーの年俸は157.5万ドル(2.17億円)、24歳のクラセは190万ドル(2.62億円)、投手最高年俸の4333万ドル(59.7億円)のマックス・シャーザーにははるかに及ばない。
MLBでも救援投手は「労多くして功少なし」になっているのだ。
もともと野球という競技は「投手が1人で投げる」ことが基本になっている。途中からマウンドを引き継ぐ「救援投手」という概念はあとからできたものであり、ポジションとして確立したのはセーブ制度が導入された1970年代になってからだ。日米ともにステイタスが低かったのは否めない。
そのうえ救援投手は数が多い。