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戦力外通告を受けた楽天“ドラ2”ピッチャー29歳「球団スタッフとして働く」つながらなかった携帯電話…11年前、高校生だった彼が教えてくれた話 

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安倍昌彦

安倍昌彦Masahiko Abe

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photograph byJIJI PRESS

posted2022/12/08 17:15

戦力外通告を受けた楽天“ドラ2”ピッチャー29歳「球団スタッフとして働く」つながらなかった携帯電話…11年前、高校生だった彼が教えてくれた話<Number Web> photograph by JIJI PRESS

2011年にドラフト2位で楽天入りした釜田佳直。11年目を終えた今秋、球団から戦力外通告を受けた

「マウンド」という闘いの現場の熱が、なまなましく伝わってきて、胸が躍ったものだ。

「目は口ほどに……っていうじゃないですか。

 例えば、ちょっと離れた所にキャッチャーがいるとして、もう1人の選手と、そっちをチラチラ見ながらヒソヒソ話をしたりすると、そのキャッチャーがそれを気にして、目が泳いだり、キョロキョロしたりするんです。それを見て、意外と気にし屋だなぁ……とか、普段は強気なことばっかり言ってるのに、ほんとは小心者だな……とか、だんだんと性格が透けて見えてくるんですよ」

 目が、相手のたくさんの情報を教えてくれる。そのことを、彼が「目の雄弁さ」というひと言に凝縮して表現してくれたから、こりゃあ本物だ……と驚いた。

「バッターが打席に入る前にスイングするじゃないですか。その姿からも、大事な情報が取れる。バッターって、いちばん力強く振りたいコースを振るものなんです。つまり、それを見ていれば、得意なコースはここ……って教えてくれているようなもの。だから、バッターの動きは、ウェイティングサークルからよく見て、観察しておかないと」

「イメージって、ピッチャーにとって、すごく大事なものだと思っていて。イメージって言っても、ただ漠然としたものじゃなくて、目をつぶれば見えるぐらいの確かさを持ちたい。投球フォームも、理想の形をイメージ化しておくと、今日の自分との誤差がわかりますから。“頭の中の可視化”っていうんですか」

「打率2割のチームが、エンドランの練習してもねぇ」

 高校野球の現場に「ビデオ映像確認」という手法が持ち込まれるちょっと前の時代だ。

 そういうこと、誰かに教わるの?と訊いたら、

「いえ、いつも、そんなことばっかり考えてるんですよ。授業中とか。ゆっくり考えるには、いい時間なので……」

 こういう場合、大人は対応に困る。でも授業で寝ているよりはずっと学習的、建設的であろう。

「スライダーの軌道なんかも、アウトローにきめたい場合に、アウトローを狙って投げたらダメなんで、具体的にどこを狙うのか。キャッチャーのマスクなのか、左肩なのか……考えることはいくらでもありますから」

 まさに「考える剛腕」。

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