マスクの窓から野球を見ればBACK NUMBER
戦力外通告を受けた楽天“ドラ2”ピッチャー29歳「球団スタッフとして働く」つながらなかった携帯電話…11年前、高校生だった彼が教えてくれた話
text by
安倍昌彦Masahiko Abe
photograph byJIJI PRESS
posted2022/12/08 17:15
2011年にドラフト2位で楽天入りした釜田佳直。11年目を終えた今秋、球団から戦力外通告を受けた
「2年秋の北信越(大会)は、スピードは145キロ前後出てるのに、敦賀気比に13安打打たれて5失点だし、佐久長聖は無失点でしたけど10安打打たれたし、明治神宮大会でも東北高校に10安打3失点。スピードだけじゃダメだって……」
1年近くも前の「数字」も、いちいち、はっきり覚えている。単なる記憶力だけじゃない。これは、エースとしての「矜恃」だ。
「これから冬を迎えて、金沢は雪もたくさん降るんですけど、雪のメリットってあると思ってるんです。“室内”ならではのメニューで、シャドー(ピッチング)もそうだし、素振りもそうだし。時間をかけて、基本動作を反復できる。野手も捕球姿勢が安定してくる。外でできると、野球やりたくなるじゃないですか。野球やれると、難しいことやりたくなるじゃないですか。打率2割のチームが、エンドランの練習してもねぇ……」
◆◆◆
戦力外通告を受けて、このコラムを書くにあたり、釜田佳直投手本人に話を聞いてみようかな……と取材の時に教えてもらった連絡先に何度か電話してみたが、結局、つながらずに終わった。
残念だったような、それでよかったような……。
現役を退いたあとのことは、家族と相談して……そんな記事を読んで、ホッとした。そして、数日後、楽天のスタッフとして働くという報道に出会った。
スカウトなのか、スコアラーなのか、それとも「楽天ジュニア」の小学生の逸材の卵たちに野球を教える先生役なのか……。どんな職種に就いても、彼の野球の視野の広さと、野球的知的水準の高さと、良い事も辛い事もいくつもあった野球的人生経験があれば、きっと貴い相談相手として頼りにされることだろう。
また、どこかの野球の現場で、顔を合わせることを楽しみにして、その日を待つことにしようと思う。