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欧州サッカーPRESSBACK NUMBER
なぜ堂安律の優勝宣言に苦言を? 誰よりも日本を知る男・ミキッチが熱弁「例えばクロアチアがブラジルに…」「モリヤスは続投すべき」
text by
長束恭行Yasuyuki Nagatsuka
photograph byYasuyuki Nagatsuka
posted2022/12/08 17:01
現在はスロベニアのマリボルでアシスタントコーチを務めるミハエル・ミキッチ氏。かつての指揮官・森保一監督に惜しみない称賛の言葉を述べた
「日本サッカー界に“冬”は訪れない。しかし…」
――Jリーグでも開幕前にすべてのクラブが優勝宣言してしまうような、しばしば非現実的なことが起こりがちです。
もちろん非現実的だ。18クラブ全部が「リーグ優勝を狙う」なんて宣言するのは不可能。おそらくクラブ側がサポーターにモチベーションや希望を与えたいからやるのだろう。実際のところ、いくつものクラブがタイトルを獲るほどのクオリティがないことを誰もが知っている。とりわけ34試合を通して戦うリーグ戦においてはね。今季のサンフレッチェ広島は3位で終わったが、私が監督だったとしても「来季はリーグ優勝を狙う」と宣言するような判断はしないだろう。もしかしたらその宣言が重圧に変わるかもしれない。
だからこそ私は常にこう言いたい。「トップ3、あるいはトップ5のチームに入れるように戦おう。そしてトロフィーを1つ掲げたい」。つまり、ルヴァンカップ、天皇杯、Jリーグのいずれかの優勝だ。そのように言えば、重荷を背負うことにならないのと同時に、何かしらのタイトル獲得の希望を与えられる。わかってくれるかい?
――はい、わかります。
例えば、大卒選手が6人から7人、新たに加入した年に「リーグ優勝を狙う」と宣言したところでも現実的ではない。それは野心的すぎる宣言だ。どのクラブもサポーターを活気づけ、モチベーションを与え、彼らに寄り添ってほしいと考えるのは理解できる。しかし、最後に大きな失望をもたらしてしまう可能性があるんだ。
――日本サッカー協会は「新しい景色」と称してW杯ベスト8を目標にしています。その目標に到達するために何が必要でしょうか?
何も特別なことはない。今までの方向性で続けることだ。とても多くの選手がヨーロッパでプレーしているし、Jリーグは本当に優れたリーグだと思う。ただし、もっとトレーニングを積む必要がある。そしてユースクラブ、高校チーム、大学チームには優れたコーチが必要だ。そうすれば日本サッカー界に“冬”は決して訪れない。コーチが優秀なプロフェッショナルならば、タレントをしっかりと育てていくだろう。そして、最も重要なのは“強力なJリーグ”だ。国内リーグが強力で、その中で最高の選手たちがヨーロッパに渡る。そして、向こうでさらなる成長を続けていく。それこそが、日本サッカーがより良くなる唯一の道だ。