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“りくりゅう”ペアはGP2大会優勝も、日本のペア代表枠「3」が“余っている”問題…シニアは実質1組だけ、日本人ペアが少なすぎる理由とは?
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph byAsami Enomoto
posted2022/11/27 11:01
NHK杯でSP世界歴代5位の得点を叩き出し優勝した三浦璃来・木原龍一組。成長著しい2人だが、日本のシニアのペアは実質“りくりゅう”のみという危機的状況にある
競技人口が増えない悪循環を止める対策
すると、どうしても注目される機会が少なくなる。テレビの大会中継でも、活字媒体での報道でも、シングルと比べればきわめて限定的だった。日本で開催される国内外の大会の観客席もシングルより明らかに空席が目立つのが常だった。
結果、ペアを目指そうと考える子供もなかなか出てこないし、子供にスケートをさせようと考える家族が描く将来像もシングルになってくる。いつまで経っても競技人口が増えない悪循環が生まれていた。
とはいえ、明るい材料もないわけではない。オリンピックの団体戦採用により、選手の発掘等を目的としたトライアウトの実施をはじめペアの強化を図る動きも増えている。今回解散することになった柚木も小学6年生で参加したトライアウトをきっかけにペアに取り組んでみたいと考えた1人だ。また、今シーズンは村上遥奈・森口澄士がジュニアグランプリシリーズに参戦している。
何よりも希望となるのは、三浦と木原の活躍だ。NHK杯ではたくさんの観客が見守り、多くのバナーなどが振られたことが象徴するように、2人によってペアに関心を寄せるようになった人は少なくない。彼らを手本、モデルとして続こうとする選手も出てくるだろう。そういう意味では、三浦と木原の存在は、変化を生む原動力でもある。
三浦、木原が抱く危機感にも似た使命感
三浦は以前、こう語っている。
「結果を残さないと、皆さんに知ってもらえないので」
木原は今回のNHK杯でこう語っていた。
「(今までのペアで)結果を出せなかったので注目していただくことはできなかったんですけど、結果を出すことで注目していただけるようになって、頑張ってきてよかったなと思います。ただここで終わってしまったら観ていただけなくなってしまうので、これからも、毎試合ベストは難しいですけれど結果を残し続ける姿を見せることが大事かなと思います」
三浦と木原、2人が抱くペアの未来への使命感は尊くとも、2人だけが背負うべきものではない。2人の活躍とそれによるペアへの関心の高まりを一過性にしないためにも、かかわるあらゆる立場の力が必要とされる。
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