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カナダに敗戦…「戦術三笘」は森保ジャパンを救えるのか 「中にも入ってくれ、と」三笘薫がプレミアで覚醒+応用が難しい理由
text by
田嶋コウスケKosuke Tajima
photograph byKiichi Matsumoto
posted2022/11/18 11:02
体調不良で代表合流は遅れたが、三笘薫と「戦術三笘」は確実にカタールW杯のキーとなる
9月の就任当初からデ・ゼルビ監督は、日々のトレーニングでビルドアップと攻撃のパターンを繰り返しているのだ。ルーティーンワークとして行なうことで、自身の戦術と考え方をチームに落とし込んでいるのである。
ブライトンの基本形は4-2-3-1になるが、最後尾のGKからビルドアップを開始すると、チームはフォーメーションの形を変える。「1トップのCF」と「トップ下」が真横に並び、最終ラインがCBの2枚だけになる「2-4-4」に変形。さらにセンターライン付近までボールを運べば、2-3-5に形を変える(図1)。
いわゆる、ボールの位置によって陣形を変える「ポジショナルプレー」と呼ばれるもの。4-2-3-1の左MFを主戦場とする三笘も、当然ポジション取りを変える。2-3-5に変形すれば、最前線「5」の位置でポジションをやや中寄りに移すのである。
チームの狙いは、ボールを保持しながら前へ前へボールを運ぶこと。フォーメーションの形を変えることで、相手陣形とのギャップを作り出し、局面局面で数的優位を作りながらボールを前方に進める。
アーセナル守備陣が食いついたところを見逃さず…
その際、ポイントになるのがサイドアタックだ。
例えば、アーセナル戦で奪った三笘の得点シーンでは、後方部からビルドアップを開始した。ボールを右サイドに展開し、攻撃のギアを上げていく。するとアーセナルはブライトンを潰そうと、守備の重心を左サイドに移した(動画の5:54頃から)。
ブライトンは、アーセナル守備陣が食いついてきたところを見逃さず、マークの薄い逆サイドにボールを展開。逆側の左サイドにいた三笘がフリーでボールを受け、きれいにゴールを決めたのである。
今一度このゴールを振り返ると、GKのパスから、スコアラーの三笘まで実に16本のショートパスをつないでゴールを奪った。その間、右サイドを経由してアーセナルの守備重心を移動させ、最後は三笘をフリーにしてゴールを決めたのだ。
デ・ゼルビ監督が「美しかった」と自画自賛する三笘のゴールは、指揮官の狙いが結実した得点だったのだ。イングランドのサッカーファンは、こうしたブライトンの華麗なパス回しを「デ・ゼルビ・ボール」の表現で讃え始めている。
思い起こすと、三笘が決勝ゴールの起点となったウルバーハンプトン戦の3点目も、似たような流れから生まれた。