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[ロストフの教訓とは]吉田麻也「“14秒”からの1605日」
posted2022/11/18 07:02
text by
松本宣昭Yoshiaki Matsumoto
photograph by
Kiichi Matsumoto
4年前、自身初の決勝トーナメント進出を果たしても悔しさばかり感じた。キャプテンとなった今も、ロストフでの痛恨の記憶が鮮明に残っている。8強入りを懸けたベルギーとの死闘で、日本代表は何を学んだのか。どうすれば“14秒”を防げたのか。その教訓とともに、カタールへ向かう。
〈Maya Yoshidaさんが入室しました〉
東京とドイツをリモートでつなぐ。パソコンの画面に映し出された日本代表主将は、鼻の下に“謎”のチューブをつけていた。
「あ、これ? リカバリーのために水素を吸引しているんです」
A代表デビューしたのは、2010年のこと。かつての若手有望株も34歳になった。この年齢でブンデスリーガと代表戦の過密日程を戦い抜くには、体調維持が不可欠だ。食事、睡眠、休養も。特にこの4年間、コンディションを高めるためのあらゆる知識を貪欲に学んだ。3年前には肺炎を患って体調を崩したことをきっかけに、小麦粉類やミルク類とも「縁を切った」。
「水素にしても、グルテンフリーにしても、生活に何を取り入れる・排除すると考えたときに、判断基準となるのは『W杯の期間中に同じことをやるか』ってことです。例えばドイツとの初戦3日前の夕食で、デザートとしてプリンが出たとします。そのとき僕は食べるかな、いや食べないな、とか。それを考えて判断する」
徹底した自己管理をずっと続けてきた。すべては2018年7月2日にやり残したことを、成し遂げるためだ。