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中山雄太W杯絶望などケガ人続出…森保ジャパンが“交代策で番狂わせ”するには? “ドイツの名将”から学べる「2つの要点」 

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ミムラユウスケ

ミムラユウスケYusuke Mimura

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photograph byKiichi Matsumoto/Getty Images

posted2022/11/05 17:01

中山雄太W杯絶望などケガ人続出…森保ジャパンが“交代策で番狂わせ”するには? “ドイツの名将”から学べる「2つの要点」<Number Web> photograph by Kiichi Matsumoto/Getty Images

森保一監督とナーゲルスマン監督。選手交代策1つをとっても指揮官の仕事は重要となる

 プロの世界ではどのような想いを持って頑張っているかではなく、結果で判断される厳しい現実がある。もちろん、真っ当なプロセスを踏んで、良い結果をつかむことが理想だ。

 だから、劣勢時にどんな“想い”を持って交代しているかより、どのような結果につながったかで、手腕は評価されるべきだ。仮に明確な結果が出なかった場合でも、どのような意図で交代カードを切ったのかを語ってほしいとも感じる。

 とはいえ、本稿のテーマは森保監督の交代策について。監督をおとしめるのは本旨ではないため、以下に対案も示しておく。

新世代の名将ナーゲルスマン監督が考える交代策の要綱

 例えば、他の監督を参考にするのもいいだろう。

 選手交代の優れた理論を持ち、実践してきた指導者の一人にバイエルン・ミュンヘンのユリアン・ナーゲルスマン監督(35)がいる。28歳にしてブンデスリーガ1部クラブの指揮官に就任し、今も名声を高める彼は「監督としての仕事のうち戦術は30%で、マネージメントが70%」と主張する。それととともに、強いこだわりを持っているのが選手交代だ。先制された試合で数々の逆転劇を演じてきた。

 有名なのはホッフェンハイムを指揮し、自身初のCLに臨んだ2018年11月のリヨン戦でのこと。彼は「退場者を出して数的不利の状況から、2点のビハインドを追いついた」CL史上初めての監督となった。

 その選手交代が評価されているのは、疲労の見える選手を入れ替えたり、戦術を変えるためだけに交代カードを切るわけではないからだ。その秘密について、ドイツプロコーチ協会の講演などで、本人が明かしている。以下にポイントとともに要旨を説明しよう。

交代策における『ダイナミクス』の変換とは?

〈ポイント1〉

「選手交代は試合の『ダイナミクス』(『力学』や『エネルギー』という意味)を変えることができる」

『ダイナミクス』というのは、観客によって作られる空気や、自他のチームの選手たちの持つ勇気、審判の判定など様々な要因の影響を受けるもので、これが最終的に試合の行方を左右すると定義している。

 日本人にわかりやすい例を挙げると、2014年ブラジルW杯の日本vsコートジボワールでの「ディディエ・ドログバの投入」が象徴的だ。

 0-1のビハインドの状況でドログバが交代のためにタッチライン沿いに立つと、ブラジル人も多くつめかけた会場はわきあがり、彼の投入後にコートジボワール代表の選手たちも勇気をもって前がかりになった。そこからの10分間で2点を取った“彼ら”が逆転勝ちをおさめた。

〈ポイント2〉

 選手には2つのタイプがいると考えている。「(戦術を機能させるための)クオリティに秀でたタイプ」と「(試合の『ダイナミクス』を変える)メンタリティに秀でたタイプ」だ。

 イメージしやすいように――ロシアW杯における日本代表で例えるなら、乾貴士が前者に、本田圭佑が後者にあたるだろう。

戦術家ナーゲルスマンが結論づけた「感情」の大事さ

 上記のポイントを挙げた上で、ナーゲルスマンは選手交代について、次のように結論づけている。

【次ページ】 エクアドル戦での選手交代に感じた“前進”とは

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