サッカー日本代表PRESSBACK NUMBER
“道しるべ”だった中村俊輔の引退にいま、中村憲剛が思うこと「たまらなく嬉しかったのは…」「俊さんとの対戦は憂鬱、なのに楽しい」
text by
中村憲剛+戸塚啓Kengo Nakamura + Kei Totsuka
photograph byAFLO
posted2022/10/27 11:04
2014年8月23日、J1第21節でマッチアップする中村俊輔と中村憲剛。同試合は横浜F・マリノスが2-0で川崎フロンターレに勝利した
代表活動期間は、僕ではない選手に対する俊さんのアドバイスに、こっそり聞き耳を立てたこともあります。どんなことを考えているのか、どうしてそういうプレーを選択したのかといった思考に、触れたかったのです。「これがこうだからこうで、こうなるとパスが出せるじゃん」といった俊さんの話を聞いて、「その感覚、分かる」という自分がいると、喜びが全身を駆け巡ったものです。俊さんの考えに共感できることが、たまらなく嬉しかった。
「オシムさんが上機嫌に」07年アジアカップの記憶
俊さんとの思い出で印象深いのは、07年のアジアカップです。ホントに楽しかった。
鈴木啓太と僕がボランチで、ヤットさん(遠藤保仁)と俊さんが攻撃的MFでした。啓太は守備に軸足を置いてプレーしていましたが、僕ら3人はかなり流動的にプレーしました。ボックス型ではなく、ダイヤモンド型に近い中盤だったかもしれませんね。
ヤットさんと俊さんとは、事前にあれこれと話さなくても機能できました。それぞれが全体を俯瞰して見られるタイプで、自分の武器やできることを把握していて、そのために周りにどう動いてほしいのかを、ボールの持ち方ひとつで見せられる。俊さんとヤットさんのボールの持ち方を見れば、「あ、こういうパスが出てくるな」とか、「ここへ動いてほしいんだな」とかいうことが分かった。プロ入り前からふたりのプレーを見ていたことが、機能することに結びついたのかもしれません。
僕を含めた3人は、同じような特徴を持っていると周囲から見られることがありました。僕自身はそれぞれにプレースタイルが違って、プレーの棲み分けははっきりしていたかなと思います。そういうなかでイメージが一緒になる瞬間が、メチャメチャ面白かったんです。お互いを見て、相手を見てプレーすることができていました。
アジアカップのベトナム戦で俊さんが決めたゴールは、いまでもすぐに思い浮かびます。左サイドから崩して、ヤットさんのパスを決めた。僕自身は得点までの流れに関与していないのですが、すごくいい崩しからのゴールで、オシムさんがとても上機嫌だったのです。それから、俊さんが右足で決めたのに驚かされました。