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YouTubeでバズった「忍者女子高生」泉ひかり26歳は今、なぜパルクールに励むのか「危険と思われる時期もあったけど」

posted2022/10/23 17:02

 
YouTubeでバズった「忍者女子高生」泉ひかり26歳は今、なぜパルクールに励むのか「危険と思われる時期もあったけど」<Number Web> photograph by Ryota Hasebe

YouTube動画で“バズった”経験を持つ泉ひかりは今、パルクールのアスリートとして活動している

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長谷部良太

長谷部良太Ryota Hasebe

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Ryota Hasebe

 どこかの高校の教室だろうか。女子生徒2人が何気ないやり取りをしている。動画を撮影しようとすると片方が「無理、無理」と恥ずかしそうに笑い、逃げた。日常の一コマのようだ。「待って~」と呼ぶ声をすり抜けるようにして、側転やバク宙をしながら廊下を逃げていく。外壁の雨どいをするするとよじ登っていく場面で、視聴者は異常さに気づく。

「忍者女子高生」役から8年後、パルクールの選手に

 5階付近の非常階段。一般人が飛び降りたら大けがをしそうな(いや、死んでしまいそうな?)高さからジャンプすると、ワゴン車の屋根に着地。街に出てからは「まきびし」で友人の追跡を阻んだかと思えば、丸太に制服を着せた「変わり身の術」でかく乱。城のような建物の一番上から豪快に飛び降り、袋小路に追い込まれると煙玉を炸裂させた。目まぐるしく変わるシーンの合間には、連続後転とびなど華麗な動きを何度も繰り出した。

 青春時代を非日常的に演出した3分半ほどの動画は、サントリー「C.C.レモン」のウェブCMとして2014年に公開された。タイトルは「忍者女子高生」。言葉の壁や国境を容易に乗り越える映像作品は見事にバズり、YouTubeでは現在1130万回以上も再生されている。

 この動画の中で、高校生役の1人として出演していたのが泉ひかりだ。26歳になった今も、アクロバティックな技に磨きをかけ続けている。根底にあるのが、「パルクール」の精神を多くの人に伝えたいという思いだ。

 パルクールはフランス軍の訓練として始まったとされ、走る、飛ぶ、登るといった基本動作を通じて心身を鍛えるための運動である。

 2001年に公開されたリュック・ベッソン監督が制作・脚本を務めた映画「YAMAKASI(ヤマカシ)」の題材になると、体一つで街中やビルの屋上を自在に飛び回る爽快なシーンが大ヒット。パルクールの存在が世界的に知られるようになった。近年は競技としての発展を目指し、2017年からは国際体操連盟(FIG)が管轄する形で各地で国際大会が開かれている。

誰かに勝ちたいというより、自分のベストを

 泉は1995年、5人きょうだいの長女として生まれた。

 小学生時代から水泳や空手、卓球、ソフトボールに加え、アクションの動きも習った。そんな活発な少女がパルクールを始めたきっかけは、高校時代に見たCM。軽くてズレにくい眼鏡をアピールするために作られた動画の中で、ある男性が街中を華麗な動きで駆け回っていた。「初めて見た時はパルクールだとは思わず、その後に見た情報番組でCMの裏側を知って、CGとかなしでやっていることが分かって。すごく楽しそうだな、と思いました」

【次ページ】 「この10年でいろんなことが進んで」

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